“近くの畑に生えていたので、ニラと間違えて食べてしまったんです…”
ちょっと信じらえないかもしれませんが、実際に死亡例も発生している
「水仙の食中毒」。
安全なはずの学校給食でも、食中毒事例が発生しています。
あの身近に咲いている良い香り漂うあの水仙(すいせん)に毒があったなんて!
それだけニラや玉ねぎに見た目が似ている水仙の葉っぱですが、
どうやら水仙は、触るだけでも接触性皮膚炎を起こす可能性もあるんだとか。
- 水仙の毒性成分とは
- 水仙は触るだけでもNG?
- 水仙毒の症状とは
などお伝えしたいと思います。
水仙(スイセン)の毒は触るとどうなる?
水仙の毒が及ぼす症状は、おう吐や下痢などの食中毒症状が、食べてから30分以内に起きるほか、
水仙に含まれる《不溶性のシュウ酸カルシウム》の影響で
「接触性皮膚炎(かぶれ)」
を起こして、かゆみを伴う発疹が起こることがあります。※1
ですから、水仙を触る際には、ビニール手袋をして扱うなど、人によっては注意が必要です。
水仙(スイセン)の毒性成分は球根・花・葉のどこにある?
水仙の毒のある部分は「全草」。
つまり、球根、葉・茎・花など全ての部分に毒が含まれています。※1
水仙の毒性成分は主にこちらの2つ
リコリンの人に対する致死量は10g。
ヒガンバナ科の植物に含まれる主な毒性分のことで、吐き気を誘発する催吐(さいと)作用があります。
この毒は、水に溶けやすい性質のため、戦時中食べ物が無い時は、数日間水にさらして食用にしていたとのこと。
しかし熱には強いので、ニラなどと間違えて炒めたりしても毒が抜けることがありません。
今でも南アフリカなどの原住民の人たちは、ヒガンバナ科の植物に含まれるリコリンを、
矢毒として利用することもあるそうです。
シュウ酸カルシウムは、ヤマイモ・里芋・タロイモ・ほうれん草などに微量に含まれていて、
一般的に結石が尿管に詰まって激痛が走る「尿管結石」の原因になる成分とされています。
シュウ酸カルシウムが皮膚に触れると接触性皮膚炎症状を起こします。ヤマイモや里芋などに触れるとかゆみが出るのはこのためです。
ですから水仙に触れることによっても、人によっては同じようにかゆみが出る場合があります。
ヒガンバナ科の植物には要注意!
水仙は、植物学的には「ヒガンバナ科」といって、身近な植物だと
- アマリリス
- ヒガンバナ(彼岸花)
- タマスダレ(玉簾)
などが同じグループに分類されます。
「一般にヒガンバナ科植物にはヒガンバナアルカロイドが含まれており、それらが有毒成分となる。 有毒成分は「リコリン」と「シュウ酸カルシウム」 などである。全草が有毒だが、鱗茎(球根)に特に毒成分が多い。 食中毒症状と接触性皮膚炎症状を起こす」
厚生労働省ホームページ -食中毒(スイセン類)- より一部抜粋
アマリリスも彼岸花も、リコリンが毒性成分として共通していて、
水仙と同じく、取り扱いには注意が必要です。
水仙の食中毒症状とは
水仙の食中毒症状は、一般的に
食後30分後
と短い潜伏期間ののち、
- 気分が悪くなる
- 吐き気
- 下痢
- 発汗
などすぐに体に異常が生じるため、消化器系の症状でとどまることが多いです。
これまでに報告されている例では
症状持続時間は約3時間が平均
と言われています。
誤って大量に摂取した場合は、
- 神経麻痺
- 昏睡
などの症状にもつながる毒性があるので注意が必要です。
水仙の食中毒になったら
誤って水仙を食べてしまい、不快な症状がでてしまったらどうすればいいのでしょうか。
もちろん我慢せずに速やかに病院へ行きましょう。
その際は食べてしまった水仙を持参します。
食品衛生法第58条では、水仙など有毒植物の患者を診察した場合、
医療機関から保健所に届ける必要があり、厚生労働省では毎年その統計をとっています。
水仙は食用や毒抜きもできる!?
水仙は、毒抜きなどすれば食用として食べることはできるのでしょうか?
残念ながら、水仙の毒抜きの情報は見つけることができませんでした。
毒を抜いてまで食べる習慣はないようなので、自己判断で洗って食べたりは決してしないでくださいね。
水仙とニラの見分け方!よく似た植物も!
水仙は、どうして間違えて食べてしまうのでしょう。
それは
「〇〇と思って間違えて食べてしまった」
という理由が一番の原因です。
もし、水仙かどうか見分けに迷ったら、最寄りの保健所へ相談してください。
水仙とよく似た植物
▼水仙とニラ
水仙と一番間違いやすいニラは、葉と根元を比べます。
水仙の葉は、太くて臭いが無いのに対し、ニラはツンとした臭いがあります。
水仙には球根があるのに対し、ニラにはひげ根だけしかありません。
▼スノーフレークという水仙は雪のよう小さな塊の花をつけます。こちらも毒があります。
▼鱗茎(球根)は玉ねぎやノビルに似ています
▼ノビル(野蒜)
水仙の葉はニラ、ノビルに見た目がよく似ているため、花が散った時期3月~5月に誤って食べる事故が多く発生しています。
「ニオイをかいでみること!」
これしかありません。
ニラ・玉ねぎ・ノビルは、「アリシン」というニンニクとおなじにおい成分があります。
強烈なツンとするにおいが無ければ水仙(スイセン)ですので要注意!
水仙の食中毒は死亡例アリ
厚生労働省がまとめている発表によると
平成19年~28年の10年間で水仙による食中毒で死亡例も確認されています。
植物名 | 間違えやすい植物の例 | 事件数 | 患者数 | 死亡数 |
---|---|---|---|---|
スイセン | ニラ、ノビル、タマネギ | 44 | 176 | 1 |
(厚生労働省 -有毒植物による食中毒に注意-より一部抜粋)
日本人の水仙食中毒の患者数は、毎年10~20名前後で、毎年のように発生しています。
京都市保健所によると、2022年4月には、
ニラと間違えてスイセン類の植物を食べ、子ども12人が食中毒になった事例も発生しています。
とくに、ニラとスイセン類の取り違えによる食中毒は、
全国では2012年以降、62件も発生していて、厚生労働省などが注意を呼びかけています。
誤食による山菜の中毒件数
水仙など自然に自生する山菜・野草などの有害植物や、毒キノコと言われる種類は沢山ありますが、誤食で食中毒を起こす事例は大変多く、
報告されているだけでも、過去10年間で約2,400人が食中毒を起こし、うち13人が亡くなっています。
食中毒の発生状況(平成18~27年)
事件数 | 患者数 | 死亡数 | |
---|---|---|---|
毒キノコ | 494件 | 1,476人 | 5人 |
有毒植物 | 207件 | 977人 | 8人 |
合計 | 701件 | 2,453人 | 13人 |
※「有毒植物」とは、ジャガイモの芽・トリカブト・水仙など
(政府広報オンラインgov-online.go.jpより一部抜粋)
水仙毒は犬や猫にも要注意
人間だけでなく、庭に水仙が咲いている家や、散歩中などで誤食により愛犬・愛猫の水仙の中毒事故もあります。
もともと、犬や猫も草を食べる習性がありますので、特に注意が必要ですね。
大半は嘔吐で吐き出されますが、時には心不全といった症状を引き起こしてしまいます。
様子がおかしい場合は、すぐに獣医さんに連れて行き、処置をしてもらいましょう。
水仙(スイセン)の毒は触るとどうなる?球根・花・葉っぱのどこ?まとめ
野山に自生する山菜・野草やキノコを摘み、季節や好みに応じて調理して味わう、
というのは自然の恵みがいっぱいで楽しみの一つです。
しかし、水仙を含む山菜採りや家庭菜園などでは、間違ったモノを採ってくることで誤食による事故は毎年多く見られます。
正しい有毒植物の知識がなく、素人判断だけで食べるのは最も危険です。
自分で植えていないものは、
- 採らない
- 食べない
- 他人に配らない
- もらわない
これを鉄則にするようにしましょう!
【参考資料】