映画や歌の歌詞、花言葉などでよく登場する「追想の愛」と「追憶の愛」。
ちなみに、春の季節に路地裏にひっそりと咲くハルジオンの花言葉は「追想の愛」です。
追憶も追想も、日常的な会話の中ではあまり使われませんが、主に小説などで用いられる言葉。
どちらも「懐かしんで思い出す」という意味のニュアンスですが、
追想と追憶って何が違うでしょうか。
「追憶」(ついおく)
「追憶」(読み方:「ついおく」)という言葉は、
過ぎ去った出来事に思いをはせること。過去をしのぶこと。
過去の出来事や、出会った人々を思い出して懐かしみを感じることです。
ただ思い出すのではなく、今の自分を過去の自分に置き換えながら、
当時の心情や情景、行動など、鮮明に思い起こすことを指します。
「追」は追いかける。「憶」は心の中にとどめて、忘れないことや過去を思いやることを意味します。
二つを合わせて「追憶」とすることで、
過去に流れていってしまうものを捕らえながら、心に留めて思いをはせるという意味になります。
追憶の使い方
「追憶に浸る」「追憶にふける」「追憶する」などの形で用いられます。
- 夫と出会って最初に言葉を交わした情景を追憶する
- まだこの街に活気があって栄えていた頃の追憶に浸る
- 亡くなった彼の存在は、今も人々の追憶の中に生きている
「追想」(ついそう)とは?
「追想」(読み方:「ついそう」)という言葉は、
過去を思い出してしのんだり、懐かしむこと。
追想の使い方
- 若かりし昔の日々を追想する
- 私の追想には、この神社の境内が現れる
- 彼は晩年を過ぎ去った日の追想の中で過ごした
- 一人でいると、妻との幸せだった日を追想してしまう
「追憶」と「追想」の違いって?
「追憶」と「追想」の違い。
どちらも、過去をしのぶ、懐かしむという意味では同じです。
ですが、あえて違いのニュアンスを表現するなら…
いまの自分を、過去の自分に置き換えその時を思い起こす。
視点が追想とは違い、常に過去の時間の中で自分が流されているイメージ。
今現在という時間を視点に、過去を振り返り懐かしむ
類義語
「過去のことを思い出す、もしくは思い返す」という良く似た意味では、
以下の類義語があります。
追億(ついおく):いまの自分を過去の自分に置き換えその時を鮮明に思い出す
追想(ついそう):過ぎ去ったことや、故人を思いしのぶ
追懐(ついかい):昔のことを懐かしく思い出す
懐古(かいこ):過去のことを懐かしく思い返す
回顧(かいこ):過去を顧みる
回想(かいそう):過去の出来事を思い返す
「追憶」「追想」「追懐」「懐古」は、
“過去を思い出して、ノスタルジーに浸り、懐かしく思う気持ち“
を強く表現する言葉。
対して「回顧」や「回想」には
“過去を思い返して反省し、改めて考えてみる“
“客観的に過去の事柄を振り返る“
という意味が含まれます。
「追憶」「追想」の英語訳
芥川龍之介『追憶』は、英訳すると
“Tsuioku” (Remembrance)。
英語では、「追憶」や「追想」はどんな風に置き換えられるでしょうか。
★「追憶」や「追想」の英語
remember
(思い出す)
memory
(思い出・追憶)
nostalgia
(故郷や過去の出来事を懐かしく思う気持ち)
reminisce
(思い出を語る、追憶する)
recall (to one’s memory)
(想い出を追想する)
★追憶にふける気分
・a reminiscent mood
★子供時代の追憶にふける
・reminisce about one’s childhood
★昔を追想させる
・《物事が主語》 remind somebody of [take somebody back to] the old days
・make somebody remember the past.
「追想の愛」「追憶の愛」の意味の違いは?英語では何ていう?まとめ
追想と追憶はどちらも、過去をしのんで懐かしむという意味。
ですが、追憶には、追想よりも、過去の時間に自分を置き換えて、より深く感情に浸っているイメージです。
そして、類義語の「追憶」「追懐」「追想」には「回想」「回顧」にない「懐かしく思い、情景に浸る」というニュアンスがあります。
ただ、どの表現をどの場面で使い分けるか、それは人それぞれ受け取り方や表現方法も違うので正解はありません。
あなただけの表現方法で、言葉のニュアンスを楽しみましょう!
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