低体温症で錯乱・吐き気・死亡例も!山や海でのチェックポイントは?

低体温症

 

冬は体を温めるためブルブル震える

夏は熱を逃がすためダラダラ汗をかく

…などは、これらは体にもともと備わっている体温調節機能、

体の平熱(36.5℃前後)を保つために働く機能です。

「低体温症」は、寒い外気や体調の影響で、体の中心部の温度が35℃以下に低下してしまい、

この体温調節機能が働かなくなってしまったことで引き起り、命の危険をともなう症状です。

  • 具体的にどんな症状がでるのか
  • 山や海で気をつけたいポイント

などを中心に紹介したいと思います。

海や山でのレジャーに行かれる際、万一の際に備えるようにしておきましょう。

 

低体温症とは

 

低体温症は、体の中心部の温度が35℃以下になる状態を言います。

低体温症とは、医学的に

「偶発性低体温症」

と言われ、単に平熱が低い状態(低体温)とは全く別の症状です。

 

温度によって現れる症状の違い

 

人間は外気温に関係なく、ほぼ一定の体温を維持できる機能(=平温を保てる機能)をもつ動物です。

 

しかし、低体温症になると、体の芯まで冷やされてしまい、

その機能が壊れ、温度の低下具合によって、体に現れる症状も変化していきます。

体の深部の体温 意識 震え 心拍数
35-33°C(軽度) 正常 あり 正常
33-30°C(中度) 無関心 なし 軽度低下
30-25°C(重度) 錯乱・幻覚 なし 著明低下
25-20°C(重篤) 昏睡・仮死 筋硬直 著明低下
20°C以下(非常に重篤) ほぼ死亡状態 筋硬直 消失

 

軽度低体温症(35~32℃)の症状

 

  • 全身の震え
  • 吐き気
  • 無気力
  • 立てなくなる
  • 呼吸が早くなる
  • 思考能力の低下
  • うとうとして意識もうろうとする
  • 手足の血管が収縮し、冷たく蒼白くなる

 

中等度低体温(32~28℃)の症状

 

  • 錯乱状態になる
  • 呼びかけても反応しなくなる
  • 呼吸が遅くなり不整脈が出てくる
  • 震えが止まり、筋肉が硬直し始める
  • 服を脱ぎ棄てたり、意味不明の言葉を発する

 

高度低体温(28℃以下)の症状

 

  • 不整脈が出てくる
  • つねったりして痛みを加えて反応しなくなる
  • 自分で呼吸ができなくなり死に至ってしまう

 

低体温症で吐き気・錯乱状態になる理由

 

低体温症なると、あらゆる体の不調が症状として現れます。

その中でも特に多くみられる状態が

  • 吐き気
  • 錯乱状態

の2つ。

これらは低体温症とどのように関係があるのでしょうか。

 

低体温症と吐き気の関係

 

体温が低いことが「吐き気(嘔吐)」につながるとは意外と思われるかもしれません。

吐き気を催す最大の原因は

  • 体調不良
  • ストレス

の2つがありますが、

低体温症で吐き気を催してしまうのは体の「ストレス」が主な原因です。

 

人間には「自律神経」というものがあり、脈拍・血圧・体温調整など生命維持のため、体の機能を細かく調整しています。

 

その自律神経をコントロールしているのが大脳の

視床下部ししょうかぶ

という場所で、吐き気(嘔吐)に関わる中枢でもあるからです。

視床下部の役割
  • 代謝機能
  • 体温調節機能
  • 自律神経を調整
  • 心臓血管機能

低体温症になると、視床下部がうまく働かず、強いストレスがかかることで自律神経が乱れることで、

結果吐き気などの症状を及ぼします。

 

低体温症と錯乱状態の関係

 

錯乱状態とは具体的にどのようになってしまうことを言うのでしょうか。

 

一番理解しておきたいのは、意識水準が低下することで

「自分の意志で話が出来ない・言葉を発せられなくなる状態」

という点です。

 

体温31度~32度あたりで錯乱状態に陥るといわれていて、

どんなに経験豊富な山岳リーダーや登山のベテランの人であっても、

錯乱状態による判断ミスをすることがあります。

 

また、症状が進んで悪化すると、保湿に対して無関心になり「寒い」という感覚すらなくなります。

 

ですから本人の「大丈夫です」という返答を鵜呑みにせず

周りの人が客観的に全身症状から判断することが重要です。

 

低体温症の対処法や救急車を呼ぶとき

 

中度以上の低体温症になったら、速やかに周りの人が医療機関へ搬送する手配をとることが第一です。

 

低体温症が軽度(35~32℃)のうちは本人に「寒気」を感じる機能がありますが、

いったん中度(32~28℃)に進んでしまうと、逆に意識水準が低下して、体の生理機能さえ働かなくなっています。

 

「寒い」という感覚すら無くなるので、正確な判断ができなくなるうえ、

急いで保温や加湿をしても、体の機能を回復させるのは難しくなってしまうからです。

 

山で低体温症を防ぐために

 

山などへ行く際に低体温症を引き起こさないためにはどんな対策があるのでしょう。

 

体は常にエネルギーを燃やしながら熱を作っているため、

熱を作るのを助けるのと、熱を逃さない工夫が必要になります。

《山登りで低体温症を防ぐ工夫》

・エネルギーを作る行動食を積極的に食べる

・脱水症状にならないようにこまめに水分補給

・疲労しないように、歩くペースを調整する

・強い風は体力を奪うので、早めにレインウェアで防寒を

・予備の防寒着を用意しておき、状況に応じて早めに着る

・汗を体から逃がすために、通気性の良い素材のものを

・帽子やフードを被って頭から熱が逃げないようにする

・汗をかきすぎると過呼吸になり疲労しすぎるので、できれば鼻呼吸出来る程度のペースで

海で低体温症を防ぐために

 

海へ行く際に低体温症を引き起こさないためにはどんな対策があるのでしょう。

 

長時間潜水しても低体温症にならない水温は33~35℃と言われているため、

海水浴などは低体温症に特に注意したいですね。

 

水の中では、空気中と比べ、20倍以上の速度で体温が奪われてしまい、

いったん体温が下がると、止まらない震えが起こり、思考がスムースにいかなくなることで、泳ぐ能力も低下します。

 

震えが止まらなくなったら低体温症の始まりのサインですから、すぐに潜水を中止しましょう。

 

ダイビングなどでは、水温により適切な潜水時間も決められているので、自己判断せずルールに従って楽しみましょう。

 

手足は低水温によって血管が収縮して熱の損失を防ぐ働きをしますが、

頭部はそのような機能が無いため、一番熱が奪われやすい部位です。

冬場や寒く感じるときには、頭の保温のためフード付きの装着が有効です。

 

潜水時の保温(防寒)装備としては、素材によってウエットスーツとドライスーツに分けられていますから、

体調や季節、状況に合ったものを選びたいですね。

 

 

日常生活でも起こりやすい低体温症

 

山や海に行かずとも、普段の生活においても低体温症は起こりえる症状です。

 

いちばん多く起こる事例としては、お酒や睡眠薬を飲んだあと寒い場所で寝てしまったようなときです。

《日常生活で起こる低体温症の例》

・冬場のマラソンなどで汗を拭かないまま外気温にふれる

・大雨に遭遇し濡れた体のまま室内でクーラーの効いた部屋にいる

・睡眠薬や鎮痛剤を多飲してそのまま防寒せずに寝る

・お酒を多飲して防寒せずに寝る

・体温調節機能が弱っている基礎疾患の人が寒いところにいる

 

低体温症で錯乱・吐き気・死亡例も!山や海でのチェックポイントまとめ

 

体温が35℃以下になり、神経や筋肉、心臓など全身の正常な機能に異常がでる低体温症。

雪山や水難の事故や災害だけでなく、

  • 高齢者
  • 基礎疾患のある人

には日常生活の中でも発症するリスクがあり、

健康で若い人であっても、思わぬ天候の変化や不注意で起こりうるため注意が必要です。

錯乱状態まで行ってしまうと、自分の意志では防寒できず、発する言葉にも注意が必要ですので、

周りのケアと理解が必要ですね。

重症化する前に、予防と対策をしっかりとしてアウトドアのレジャーも楽しみましょう。

 

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