2017年11月、東京・小笠原諸島で、とっくに絶滅したと考えられていた
「シマクモキリソウ」が、なんと79年ぶりに再発見されました。
日本が誇る世界遺産の一つ、小笠原諸島での絶滅危惧種の再発見に
“生きている間に幻のラン見られるなんて…涙涙“
と、研究者の先生方も大喜び!
- シマクモキリソウの自生地
- クモキリソウとの違いは?
など調べてみました。
シマクモキリソウとは
小笠原・幻のラン:「シマクモキリソウ」79年ぶり再発見 – 毎日新聞 https://t.co/PXNVwgxTsU
— Life Is Beautiful (@LifeIsB79799907) November 10, 2020
シマクモキリソウ | |
属性 | ラン科 クモキリソウ属 |
学名 | Liparis hostifolia |
絶滅度 | 絶滅危惧IA類 |
シマクモキリソウは、小笠原諸島に生息する日本固有の植物。
花は長さ1センチほどの緑色、花びらの奥が紫がかった茶色をしています。
世界には約300種ほどのクモキリソウ属の多年草の植物があると言われ、日本~朝鮮半島に多く分布しています。
シマクモキリソウが最後に確認されたのは、1938年(昭和13年)小笠原諸島の父島が最後でしたが、
2017年11月、約300キロ離れた小笠原諸島の南硫黄島でシマクモキリソウの株を発見!
そして、つくば市の国立科学博物館へ持ち帰られ、栽培して花を咲かせるのに大成功させたのです。
約80年もの間、ほぼ絶滅したと考えられていた植物だっただけに、
「まさに世紀の再発見!」
と話題に。
シマクモキリソウは大変希少なうえ、栽培が非常に困難で展示中の維持管理が難しいため、
展示は2017年11月19日〜26日の間のみ、筑波実験植物園で開催される「つくば蘭展」での限定公開されました。
小笠原諸島・南硫黄島はどこ?
小笠原諸島(東京都小笠原村)といえば、日本が誇る自然の世界遺産の一つ。
大陸とつながったことのない海洋島で、島にたどり着いた生物だけが独自に進化した特異な生態系が見られることで、
2011年自然遺産に登録されました。
東京の南南東約1,000kmの太平洋上にあり、30余の島々で成り立っていて、その多くは無人島です。
南硫黄島(みなみいおうとう)とは
小笠原諸島の島々の中でも、シマクモキリソウが見つかった南硫黄島も無人島。
これまで人間が立ち入った影響が極めて少なく、原生の自然が保たれていることから
自然環境保全法に基づき、1975年(昭和50年)に
「南硫黄島原生自然環境保全地域」
に指定。
現在は全域が立入制限されていて、研究目的以外に上陸はできません。
南硫黄島の大きさや標高
南硫黄島は面積3.54㎢、周囲約7.5㎞の大きさ。
・富山県舟橋村(日本で最も狭い市町村・3.47 ㎢)とほぼ同じ
・千代田区(11.64 ㎢)の3分の1くらい
なので、無人島としてはかなり大きめというイメージではないでしょうか。
最高標高は916mで、伊豆諸島・小笠原諸島の中では最高峰とされています。
南硫黄島はガラパゴス!
南硫黄島は『絶滅危惧種の動植物生息地の宝庫』としても知られています。
- オガサワラオオコウモリ
- ミナミトリシマヤモリ
- オガサワラトカゲ
などをはじめとして、
シダの一種で、世界で唯一南硫黄島だけにか生息していないナガバノコウラボシなど、
絶滅危惧種とされている動植物のうち、
維管束植物118種、哺乳類1種、鳥類21種、爬虫類2種、昆虫152種もが確認されています。
南硫黄島は、ほとんど人為が加わることがなかったため、
自然そのまま状態が今日まで保たれてていて、現在も研究目的以外に上陸が許されていません。
しかもその研究すら殆ど行われておらず、まさにガラパゴス。
調べたらまだまだ未知の生物が出てきそうですね。
シマクモキリソウに似た植物
シマクモキリソウに似ている、同じ属性のラン科の植物は他にどんな種類があるのでしょうか。
クモキリソウ
属性 | ラン科 クモキリソウ属 |
学名 | Liparis kumokiri・英名は無し |
和名 | 蜘蛛切草、蜘蛛散草、雲霧草、雲切草 |
クモキリソウはラン科の多年草。山地の林下などに生息。
名前の由来は、花の姿が蜘蛛の子に似ている、または蜘蛛の子を散らすように見えるという説がありますが、はっきりした由来は不明。
日本では南千島、北海道、本州、四国、九州、琉球に分布し、世界では朝鮮半島も分布。
スズムシソウ
近くの里山散歩で見つけた
素敵なスズムシソウ pic.twitter.com/46bGxP8VOT— 甲斐駒 (@ka3ikoma) June 4, 2019
今年も会えた!#スズムシソウ pic.twitter.com/1odHZ67UiK
— miki (@myukiwarisou) June 11, 2020
属性 | ラン科 クモキリソウ属 |
学名 | Liparis makinoana・英名は無し |
和名 | 鈴虫草 |
和名は花の唇弁がスズムシの羽ににていることから由来。
開花時期は5~6月、北海道から九州まで自生していますが、園芸用としても人気の高い花です。
シマクモキリソウは絶滅危惧種
シマクモキリソウは日本の絶滅危惧種に指定されている植物。
環境省が公表している
“絶滅のおそれのある野生生物・植物のリスト”=通称「環境省レッドリスト」
に入っています。
「環境庁レッドリスト2017年度版」によると、
・動物が約40%の1,372種類
・植物が約60%の2,262種類
もの動植物が現在指定されています。
シマクモキリソウの絶滅危惧度は?
絶滅危惧種と一言でいっても、段階がいろいろあります。
→スマホの方は横スクロールで表が見られます→
カテゴリ | 略称 | 定義 | 具体的な生き物 | ごく簡単に |
絶滅 | EX | 日本ではすでに絶滅 | ニホンオオカミ | 日本にいません |
野生絶滅 | EW | 飼育・栽培下の状態でのみ存続している種 | トキ | 自然の中はいません |
絶滅危惧Ⅰ類 | CR+EN | 絶滅の危機に瀕している種 | アホウドリ | 助けて!絶滅してしまう |
絶滅危惧ⅠA類 | CR | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの | イリオモテヤマネコ | 助けて!もうすぐ絶滅してしまう |
絶滅危惧ⅠB類 | EN | ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの | アカウミガメ | かなりマズイ状態で絶滅しそう |
絶滅危惧Ⅱ類 | VU | 絶滅の危険が増大している種 | カスミサンショウウオ | 結構な確率で絶滅危機 |
準絶滅危惧 | NT | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 | ヤマメ | 今のところ大丈夫だけど気にしておこう |
情報不足 | DD | 評価するだけの情報が不足している種 | エゾシマリス | ごめん!情報無いから分からない |
絶滅のおそれのある 地域個体群 |
LP | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの | ツキノワグマ | 場所によってはマズイ |
(参考:環境庁レッドリスト2017年度版)
定義上の「絶滅危惧種」とは青で着色した4カテゴリ内のものだけを指します。
上の図のように、レッドリストには絶滅具合でカテゴリ別に分かれていますが、
シマクモキリソウは
絶滅危惧IA類(CR)
に分類されていて、大変貴重な植物なのです。
まとめ
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