私たちの身の回りには、菌・ウイルスなど、体に害をおよぼす病原体が、一年中存在しています。
しかし同じ環境下で生活をしていても、風邪を引きやすい人と、いつもピンピン元気でいる人がいます。
いわゆる「身体が弱い人」も「身体が丈夫な人」も、同じように病原体は体内に侵入しますが、
「身体が丈夫な人」は免疫力・抵抗力が強いため「外敵」が侵入しても病気になりにくいのですね。
免疫力・抵抗力はどちらも「体を守るチカラ」のことですが、明確にはどんな違いがあるのでしょう。
病原体に負けない強い体づくりのキーワード「免疫」について紹介します。
抵抗力・免疫力とは
免疫力・抵抗力とは、しばしば言い分けられる場合がありますが、学術的には「免疫」の働きは
- 「抵抗力」=自然免疫
- 「免疫力」=獲得免疫
に2分されていて、2つまとめて「免疫力」と言われることが多いです。
免疫の種類 | 抵抗力=自然免疫 | 免疫力=獲得免疫 |
有害物質(敵)に対しての働き | 一番最初に、耐えて守って跳ね返す力 | 体に影響を出さないように死滅させる力 |
働きを一言で言うと… | 体のブロック&ガード | 身体がスルーして慣れる・抵抗・排除出来る力 |
どうやって作られる? | 持って生まれた体の強さ | 経験によってつくられる体の強さ |
免疫細胞の役割 | 常設の戦闘部隊! | 自然免疫で倒せなかった敵に対して戦う! |
主な免疫細胞名 | ・マクロファージ ・NK細胞 |
・ヘルパーT細胞 ・キラーT細胞 ・B細胞 |
「免疫」とは、「疫」=病気から逃れる仕組みのこと。
体に有害な物質が侵入しても、それ自体を限りなく無にしたり死滅させるなどしながら、
体に影響を及ぼさないように出来るチカラのことです。
免疫力には2種類!自然免疫と獲得免疫とは?
先ほど図でお話ししたように、免疫力は
「自然免疫」
「獲得免疫」
の2種類あり、それぞれの役割を持っています。
自然免疫=抵抗力
自然免疫とは、いわば持って生まれた身体の強さ。
体質によって風邪やインフルエンザになりにくい方がいますね。
これは元々身体に備わっている「自然免疫」の力、つまり「抵抗力」が強いからです。
獲得免疫=免疫力
獲得免疫とは、経験によって作られる身体の強さ。
人間は子供から大人に成長するにつれて、一般的に身体が丈夫になり体調を崩しにくくなります。
もともとの「自然免疫」に加えて、様々なウィルスや細菌を体験したことで獲得免疫が出来るのです。
免疫細胞の役割
持って生まれた身体の強さの「自然免疫」と、経験によって作られる身体の強さの「獲得免疫」の、
2つの役割がある「免疫力」。
免疫力の強さを決定づけるのは、ズバリ、免疫細胞の強さ。
免疫細胞は、血液の白血球・リンパ球に存在する細胞で、
全身を循環しながら、それぞれの役割をもって侵入した病原菌と戦ってくれるのです。
自然免疫の免疫細胞
「自然免疫」の免疫細胞は、24時間休むことなく、体内に病原体が入り込んでいないかをパトロールしているお巡りさん。
- マクロファージ
- NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
彼らは体を守るいわば常設の前線部隊。
例えば癌細胞は、健康な人でも一日に5000個程度の癌細胞が生まれているといわれていますが、
抵抗力が強い体は、NK(ナチュラルキラー)細胞が最前線で癌細胞を撃退してくれているため、
健康体を保つことができるのです。
獲得免疫の免疫細胞
自然免疫細胞との戦いを潜り抜けてしまった外敵と戦うのが「獲得免疫」の免疫細胞です。
- ヘルパーT細胞
- キラーT細胞
- B細胞
彼らは、数々の病原体(敵)と戦うたびに経験値を高めていくため、一度戦った相手のことは覚えています。
ただ「獲得免疫」の攻撃は、病原体に対して迎撃態勢を整えるまでに時間がかかることもあり、
準備に間に合わず発症してしまい、治るまでに時間がかかることもあります。
免疫力を高めよう!
免疫細胞は、自覚は無くても私たちの体内で、敵(病原体)の攻撃を24時間体制で防ぎ、戦いつづけています。
抵抗力や免疫力が低下することは、体を守る力が低下するということ。
結果、色んな病気を防ぎにくい体につながってしまうのですね。
自分の免疫細胞を正常に働かせ体を守ってくれるように、
免疫細胞の酸化を防ぐような食事や生活習慣を実践することが免疫力の強化につながります。
免疫力を下げてしまう原因6つ
「歳をとると免疫力が下がる」
「ストレスや疲れで抵抗力が弱まる」
と言われるように、免疫力を支える免疫細胞の働きは、
- 老化
- 食生活
- 運動不足
- ストレス
- 生活環境
などの理由で、精神的にも肉体的にも、負荷がかかることで大きく下がってしまいます。
老化や遺伝など避けられない理由以外で、
免疫力を下げないために、意識的に普段から努力していくしかありません。
免疫力が下がる原因1) 老化
加齢にともなう臓器の機能低下と平行して、免疫機能も低下してしまいます。
引用:味の素・いきいき健康研究所
同じ感染症であっても、赤ちゃんや子供、高齢者の方が重症化しやすいのは、免疫力が成人よりも低いから。
一般的に人の免疫力は20歳ごろをピークに、以降免疫力が自然に上昇することはあり得ません。
- 40歳ころには20歳ころの50%減
- 70歳ころになると全盛期の10%
まで免疫力は激減していくと言われています。
免疫力は、加齢によってどんな人でもどんどん低下していくため、
年齢を重ねるたびに、そのほかの面から免疫力低下の抑制を図っていかなければいけないのです。
免疫力が下がる原因2)[現代型免疫低下]
[現代型免疫低下]とは、現代人に多い
・偏った食生活
・飲酒・喫煙
・運動不足
・ストレス過多
などで起こる免疫力低下のことです。
引用:味の素・いきいき健康研究所
現代人の免疫力は、ひと昔と比べて著しく低下していると言われていて、
高齢でも特殊な病気でもないのに免疫力が低下した人が増えています。
「現代型免疫低下」は、下記、一つでも当てはまる人は要注意です。
・しっかり寝ても疲れがとれない
・すぐに口内炎やヘルペスができる
・風邪をひくとなかなか治らない
・花粉症やアトピーの症状がひどくなった
・重要な会議や試験当日など、いざという時に体調を崩す
・季節の変わり目など、寒暖の差が激しい時に調子を崩す
・久しぶりに激しい運動をした後に風邪をひいた
免疫力が下がる原因3)食生活
「現代型免疫力低下」の最大の要因といえるのが食生活の乱れ。
インスタント食品、加工・冷凍食品ばかり食べると、酸性物質や老廃物によって血質が悪化し、
免疫力が低下し成人病を引き起こしやすくなります。
規則正しくバランスのよい食生活を心がけ、
良質なタンパク質・ビタミンやミネラル類など、免疫力を高める食材をしっかり摂りたいものですね。
免疫細胞の70%は、食事を消化・吸収・排泄する「腸」にあるともいわれていて
食生活の改善こそが、もっとも免疫力低下を避けるための近道といえるかもしれません。
免疫力が下がる原因4)運動不足
運動不足も、体力&免疫力を同時に低下させる要因になります。
適度な運動は免疫力を活性化させ、健康的な体づくりにも役立ちます。
20分から1時間程度歩くだけで、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性が高まる。ウオーキングなど無理のない運動を日常的に続けることで、免疫力を高めることができる
日経ウーマンオンライン -運動と免疫の関係-
反対に、激しい運動は免疫力低下につながり、逆に風邪も引きやすくなるのでのでご注意を↓
激しい運動をすると筋肉が損傷し、それを修復しようとして免疫細胞が働く。この結果、腫れや痛みといった炎症が起こる。だが、日常的に過酷なトレーニングを続けていると、体はなるべく炎症を起こさないように免疫反応を抑えるようになる。こうして感染症に弱い状態が生じる
日経ウーマンオンライン -運動と免疫の関係-
免疫力が下がる原因5)ストレス
ストレスと免疫の2つは深い関わりがあります。
人間はストレスを感じると、本能的に脳は「免疫力低下ホルモン」を出して傷ついた部分を修復しようとします。
どんなに健康的な食生活を送り、日々運動をしていても、メンタルが弱ると免疫力も下がります。
免疫力が下がる原因6)環境
生活環境も、免疫力低下に影響します。
紫外線、水質汚染、大気汚染、土壌汚染などの環境要因は、避けて生活するのは困難なことが多いですが、
意識的に対策をしながら、取り入れないようにしましょう。
笑うことが一番の良薬
お腹の底から声を出して笑うと、心も体もスッキリ元気になる気がしませんか?
“笑うだけで免疫力が上がるの?”
と思うかもしれませんが、”笑い”が心や体に良いということは医学的にも実証済。
病気の予防や治療、免疫異常の改善、ストレスの軽減など、
あらゆる良い効果があると注目されています。
「笑うこと」が発端となって作られる”善玉”の神経ペプチドは、
血液やリンパ液を通じて体中に流れ出し、NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化し、
結果、がん細胞やウイルスなどの病気のもと攻撃するので、免疫力が高まります。
逆に、悲しみやストレスなどマイナスの情報を受け取ると、
NK(ナチュラルキラー)細胞の働きは鈍くなることで、免疫力も下がってしまうのです。
ストレスを感じずに生きることは容易ではありませんが、たとえ気持ちが沈んでいても、
無理やりにでも口角を上げることで、脳は
「笑うこと=嬉しいことがあった!」
と判断し、瞬時に免疫細胞に良い影響を与えてくれます。
免疫力と抵抗力の違いと意味!免疫低下しやすい原因と高めるための対策まとめ
体の免疫細胞は、総力をあげて日々病原体と戦いながら、体を守ってくれています。
・十分な睡眠
・バランスの良い食事
・疲れやストレスを溜めない
この三大原則に加えて
・うがい
・手洗い
・マスク着用
により、外からの病原体ウイルスの侵入を防ぐ対策も忘れずに!
万一病原体に接触しても、影響を受けにくくするため、普段から体そのものの免疫力を高めておくことが大切です。