善玉菌の代表格である乳酸菌を多く含んだ食品といえば、ヨーグルト!
“腸活”のため、毎日欠かさず食べているという人も多いのではないでしょうか。
ヨーグルトのパッケージにはビフィズス菌、B21菌、LGG菌、ガセリ菌…など、
様々な菌の名前が書いてありますが、いずれも乳酸菌の仲間。
乳製品の大手は各社こぞって、新しい有効な菌をPRし
「生きたまま腸まで届く!」
を宣伝している感があります。
でも、そもそも乳酸菌って、本当に生きて腸に届かないと意味がないのでしょうか?
乳酸菌やビフィズス菌が「腸まで届く」のは本当?
《生きて腸まで届く乳酸菌!》
というキャッチコピーのCMが流行りだして、かれこれウン十年。
メーカーが主張するところによれば、
「ヨーグルトに含まれる乳酸菌の多くは胃酸で死滅してしまうところ、
研究開発によって乳酸菌を生きたまま腸に届けることが出来るようになった!
腸まで到達した乳酸菌は、乳酸を作り出して腸内環境を酸性にするため、善玉菌が働きやすくなり悪玉菌が抑制される」
とおおむねこのような説明。
私たち消費者の頭には
乳酸菌は生きたまま腸まで届かないと意味がない…?
という恐怖心とイメージがすっかり刷り込まれ、
「生きた菌」信仰が日本の消費者に広がり、生きた菌入りのヨーグルトこそ価値の高いものだと信じられてきました。
【悲報】ほとんどの乳酸菌はそのまま体外に排出される
ところが、専門家の間では、長年この「生きた菌」信仰に対して懐疑的な声が上がっています。
ヨーグルトなど生きた善玉菌を含む発酵食品は、「プロバイオティクス」と言われています。ただし、これらの菌は腸内にある程度の期間は存在しても、住み着くことはないことが明らかになってきたのです。よって、腸内にもともとすみついている善玉菌に、オリゴ糖や食物繊維などの「プレバイオティクス」とよばれるエサを与えて数を増やすことの重要性が提唱されはじめました。
なにしろ現在まで、腸に乳酸菌を定着させる(棲み付かせ増殖させる)という論文は一報も出ておりません。
(にもかかわらず)ヨーグルトだけでなく、生きた乳酸菌製剤も作られて、サプリメントでも「生きて腸まで届く」をセールストークにしたものが次々と販売されています。
その菌が生きたまま腸に届くかどうかは、あくまで腸に至るまでの消化酵素や㏗といった条件をそろえた装置の中で検証しているにすぎず、実際にヒトの体内に入ってから生きたまま腸に届いているかどうかは、誰も確認していないのです。
さらに、腸内フローラの研究が進んだ今では、外から入ってきた菌が、仮に腸まで生きたままたどりついたとしても、腸にもともといる菌の集落に定着することはまず期待できないことが確実にわかってきました。
Q)ヨーグルトなどの乳製品を摂ると、生きたままビフィズス菌が腸に届くと宣伝は本当?
A)ビフィズス菌入りのヨーグルトを食べたときの糞便を調べてみると,大腸内に常在しているビフィズス菌と共に食べたビフィズス菌が検出されることがあります。メーカーによっては、胃酸や胆汁に対して耐性を持ったビフィズス菌を育成し、その菌を用いたヨーグルトをつくり、糞便からの回収性を確認しています。このような確認試験を経ることによって、その様な表現がされています。
引用:財団法人腸内細菌学会
最後の回答を読んで、
奥歯にモノが挟まってるような…質問の答えになってない!?
とツッコミを入れたかったのは私だけじゃないはず笑。
けっきょくのとろ、
《生きたまま腸まで届く!》と謳っているヨーグルトも、
- 本当に生きたまま届いているのか?
- 仮に生きたまま届いていたら、どんな健康効果がある?
- 仮に生きたまま届いていても、腸に住み着くというデータがない
など、肝心な部分があいまいでハッキリしない・分かってない状態という実態が浮き彫りになります。
【朗報】実は死菌も効果あり!
実際のところ、乳酸菌の多くは、生きたまま体に取り入れても、
食べ物を消化するために分泌される胃酸によって、
腸にたどり着くまでに死んでしまいます。
しかし例え死んでいても、乳酸菌の効果が無くなるという意味ではありません。
乳酸菌が死菌であっても、生菌や常在する腸内細菌のエサになり、
腸内環境のバランスを善玉菌優位にすることに大きく貢献します。
そして死菌は、免疫組織を刺激し、免疫力をアップする作用の一つとして使われることも分かっていて、
乳酸菌は死んでいても血中コレステロール値を下げる有効な働きがあるのは変わりません。
そのため、腸内環境を整えるには、生きたまま腸に届く乳酸菌を追い求めるよりも、
多くの乳酸菌を摂取しながら、自分の腸に合った乳酸菌を探すほうが大切なのです。
乳酸菌とは菌類の総称、明確な定義無し!
乳酸菌とは、炭水化物などの糖を分解して乳酸をつくる細菌の総称で、
分類できる特定の細菌や、生物学上の明確な定義はありません。
乳酸菌の種類は多種多様で、正式に認められている種類は250種以上、
それ以外にも数千種類は存在しているといわれています。
自然界に存在するあらゆる菌の中から、次のような特徴を持つ菌の総称として乳酸菌と呼んでいます。
乳酸菌の特徴
多くの乳酸菌は、ビフィズス菌と違い、空気中でも生息できるので自然界のあらゆるところに存在しています。
- 発酵によって糖を分解して「乳酸」をつくる
- 腐敗物質を生成しない(アンモニアなどの悪臭を発するものや、毒性のある物質)
- 酸性が強い環境でも繁殖できる(乳酸菌や腸の中の善玉菌は、酸性の強い環境で繁殖しやすいという特徴がある)
- 栄養の消化吸収や便通を改善し、免疫力を向上させる
「動物由来」と「植物由来」乳酸菌効果に差はあるの?!
乳酸菌はあらゆる食材を発酵させ、チーズ、ヨーグルト・味噌・納豆・ぬか漬けやキムチなど、
おなじみの健康効果と保存性が高い発酵食品に多く含まれています。
乳酸菌の種類はたくさんありますが、分かりやすく分類するとするなら、
「植物性乳酸菌〇〇」など、「動物性」と「植物性」に分類することができます。
植物性乳酸菌 | 動物性乳酸菌 | |
菌の特徴 | 栄養が少なく塩分の多い過酷な環境下でも生き抜く | 乳糖が主成分の栄養豊富な環境を好む |
主な食品 | 味噌・醤油・漬物・納豆 | チーズ・ヨーグルト |
種類の数 | 約200種 | 約20種 |
ただし、乳酸菌を「植物性」と「動物性」に単純に分けることは、難しい場合もあります。
なぜなら、例えばチーズを作る乳酸菌ラクトコッカス・ラクティスにように、
植物からも分離され、植物質を発酵して生育できるような、
「植物性」「動物性」どちらの素質も兼ね備えた乳酸菌も数多く存在するからです。
乳酸菌はあくまで、食品の素材ではなく、菌種・菌株によって分類されるため、
「植物性」と「動物性」の違いで健康効果が分かれるということではないのです。
一般的な発酵食品内の乳酸菌は、種類も数も一定ではなく、商品によって菌種・菌株が異なるため、
「キムチにはこの乳酸菌の●●が含まれているから、この健康効果」
「ぬか漬けはこの菌だからこの健康効果」
などと、一括りで表現できないのが現状です。
ビフィズス菌とは?
ビフィズス菌は、250種類以上あると言われる乳酸菌のうちの一種で、代表的な善玉菌です。
ヨーグルトに多く含まれていることで知られるビフィズス菌は、もともと人間の腸に住み着いている細菌で、
生まれたての赤ちゃんには、腸内細菌の90%以上をビフィズス菌が占めているといわれますが、
年齢とともに激減し、成人になると約10%程度まで減少してしまいます。
もちろん、子供も大人も、ビフィズス菌は腸内環境を整えるためには、もっとも大事な善玉菌の一つ。
そのため、腸内のビフィズス菌数の変化は、ほかの乳酸菌よりも体への影響が大きいと考えられています。
ビフィズス菌の働きと特徴
ビフィズス菌は、「乳酸菌」の特徴に加えて、さらに沢山のはたらきがあります。
- 発酵によって、乳酸のほかに「酢酸」をつくる(酢酸は殺菌力が大変強くお酢の主成分)
- 自然界では動物の腸でしか生きれない(酸素に触れると死んでしまう)
- ビタミンB群などの、人のエネルギー源となる物質をつくる
「ヨーグルト=ビフィズス菌」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、
すべてのヨーグルトにこのビフィズス菌が含まれているわけではありません。
ヨーグルトは乳酸菌を使って牛乳を発酵させたものですが、
ビフィズス菌以外の乳酸菌を使っている製品もたくさんあります。
日本の規格で、「ヨーグルト」は乳酸菌の種類については特に定められていないのが現状で、
多くは
- ビフィズス菌
- ブルガリア菌
- サ―モフィルス菌
- ガセリ菌
- カゼイ菌
などを添加して作られたものが多いようです。
乳酸菌が「腸まで届く」を実感するためには?
《腸相》という言葉があるように、腸内細菌には個人によって特有の構成があります。
人の腸内には、細菌がおよそ1000種類、100兆個も生息していることが知られていて、
善玉菌、悪玉菌、日和見菌といわれる菌がバランスを保ちながら、
胃や腸などの消化器の働きや、腸内環境を整えています。
体の健康には、腸内にビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が占める割合を増やすことが重要ですが、
ヨーグルトをはじめとする乳酸菌を選ぶ際には、個人の腸との相性がもっとも重要なため、
乳酸菌飲などの商品に表示されているに菌株や菌種、
商品に含まれる乳酸菌の数によっても、あなたの腸内環境への影響が変わってきます。
腸内環境を整える5つの習慣
腸内環境を整えて健康を維持するための、5つの習慣を紹介しましょう。
習慣1.決まった乳酸菌を2週間は続ける
乳酸菌はたくさん食べても一気に腸内の乳酸菌が増えるわけではなく、
継続して毎食分けて食べることで、効果を実感しやすくなります。
また、ビフィズス菌を含む乳酸菌は、胃酸に弱い性質があるので、胃酸の濃度が薄めの食後に摂るのがより効果的。
腸との相性は実際に自分の身体で試して効果を確認するしかないため、
ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなどを試す際は、
同じ商品・同じ量をまずは最低2週間~3か月は続けてみて、
効果が実感できるかどうかを確認してみましょう。
習慣2.乳酸菌はオリゴ糖と食物繊維セットで摂る
乳酸菌が元気に腸内で働くためには、エサが必要です。
エサとなる代表的な栄養源はオリゴ糖や食物繊維。
バナナ、豆類、甘酒、たまねぎ、ゴボウなどは乳酸菌にとってうれしい食材です。
習慣3.毎食に1品、乳酸菌を含む食品を摂る
朝昼晩の食事に、1品はみそ汁や漬物、ヨーグルトなど乳酸菌をふくむ食品を取り入れてみましょう。
ぬか漬けに含まれる乳酸菌の量は、たった1gに1億個以上ともいわれています。
習慣4.軽い運動の習慣をつける
軽い運動、とくに歩くことへのカラダの振動や筋肉の動きは、腸内の便の移動をスムーズにしてくれます。
乳酸菌がたくさん住んでいる腸そのものを動かすことで、悪玉菌も追い出しやすい環境を作りましょう。
習慣5.快便タイムをとる
腸内環境をよくするためには、十分に睡眠をとった後、翌朝余裕をもってトイレに入る時間も必要です。
便意を残したまま過ごすと、腸内環境が乱れ、便秘になりやすく、ガスが体にたまってしまいます。
ビフィズス菌が「腸まで届く」とは?乳酸菌との違いや定義まとめ
乳酸菌の多くは、胃酸によって死滅してしまうため、生きたまま腸まで届き、かつ定着するのは難しい細菌です。
しかし、その乳酸菌が死菌であっても、免疫力をアップさせたり
血中コレステロール値を下げる有効な働きがある乳酸菌は、
継続して摂取することで、体を元気にしてくれることは間違いありません。
腸内環境を整えるには、生きたまま腸に届く乳酸菌を追い求めるよりも、
多くの乳酸菌を摂取しながら、自分の腸に合った乳酸菌を探すことが大切です。