ホタル(firefly)のスピリチュアル的な意味とは?発行物質ルシフェリンの語源も紹介

蛍 ホタル

 

初夏の風物詩、蛍(ホタル)。

幻想的で妖艶な光を放つその姿は、昔からスピリチュアルな意味があるとして

日本でも西洋でも神秘的な存在とされてきました。

キレイな光を放つ蛍ですが、かつては不吉さを象徴する生き物だったことをご存知でしたか?

あんなに美しいのに、どうして「不吉」と言われてしまったのでしょう。

今回は、蛍(ホタル)にまつわるスピリチュアル的な意味や歴史背景を紹介します。

蛍のスピリチュアル的な意味や縁起とは?

 

世界に約2000種類、日本には約40種類いると言われるホタル。

昔から神秘的でスピリチュアルな意味があるとして

  • ひらめき
  • インスピレーション
  • 記憶・思い出
  • 希望への導き
  • 魂の声(自分の潜在的な心の声)

などの象徴として比喩されてきました。

西洋においても「Spirit Animal」の象徴として扱われるホタルは、

“あなたの内面にある心の声に、ちゃんと耳を傾けなさい”

というメッセージ性があり、

真理の方向へと私たちを導いてくれる生き物だと信じられています。

 

蛍は生態そのものがスピリチュアルな象徴

 

日本のホタル(japanese firefly)といえば、ゲンジボタル

日本固有の種でもある

ゲンジボタル(源氏蛍)

学名:Luciola cruciata

は、本州以南の日本各地に分布し、

世界的にみても大型の種類(体長1018mmで、光りも強く美しいとされています。

 

ゲンジボタルは「光る十字架」

 

ゲンジボタルの学名「Luciola cruciata」は、ラテン語で「光る十字架」という意味で、

成虫の頭(前胸部)には、名の通り淡い赤色で十字架の形をした黒い模様があり、

1854年にロシアの昆虫学者によって命名されました(Wikipediaより)

たしかに、体に十字架の形をした模様があるゲンジボタルを見れば、誰しも

  • 「死者」
  • 「霊魂」

といったイメージを連想してしまうのではないでしょうか。

 

ホタルは、成虫になってからの寿命は約1~2週間と短く、

成虫になってからはエサを食べずに、水だけを飲んで懸命に生き延びることから、

そんな姿も相まって、儚(はかな)さが余計に強調されるような気がします。

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源氏蛍(ゲンジボタル)は「光る十字架」

 

日本各地に生息する代表的なホタルといえば、

朝鮮半島、東シベリア、中国にも分布するヘイケボタルも忘れてはいけません。

「ゲンジ」と「ヘイケ」、お気づきの人もいらっしゃると思いますが、

  • 「源氏」
  • 「平家」

という、平安時代から続く貴族の家系に由来しています。

 

じつは、和名の由来「源氏蛍」「平家蛍」は諸説あり

11世紀の平安時代の紫式部の小説『源氏物語』に由来するという説や、

12世紀の源氏と平家との間で起こった数々の“源平合戦“に由来するという説もあります。

~源氏ボタルの和名の由来~
平家打倒の夢破れ、無念の最期を遂げた源頼政の思いが夜空に高く飛び舞う蛍に喩えられた。 平家に敗れた源頼政が亡霊になり蛍となって戦うと言う伝説があり、「源氏蛍」の名前もここに由来している。

引用:Wikipedia

ゲンジボタルの英名「Luciola cruciata」(=光る十字架)が、

ロシアの昆虫学者によって名付けられた1854年は、日本では江戸時代後期でしたが、

見た目の十字架模様に加え、「源氏」という和名からも、

源氏一族の『死者の魂』『死者が蛍となって現れた姿』の象徴としても通ずるものがあり、

インスピレーションを受けたのかもしれませんね。

日本書紀で蛍の光は邪神の象徴だった

 

蛍は、平安時代には『源氏物語』をはじめ、『王朝語』などの和歌にも多く登場します。

美しさや儚さを比喩する生き物として、

また、「蛍」の放つ光の様子が、胸の中で“燃える思い”を描写する表現として、たびたび蛍が登場します。

 

ただ、平安時代以前には、蛍はどちらかというと不吉な生き物として捉えられていたようです。

 

実際に、奈良時代に成立した日本最古の歴史書『日本書紀』(720年)には

「彼地多有蛍火之光神及蠅聲邪神」

(現代語訳)その地には蛍火のように光る神や蠅のように騒がしい邪神がいる

という記述が残されています。

 

これは、天照大神の孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が、

天から地上に降りてきた時に、「地上の様子を描写したもの」で、

蛍の光=邪神の象徴

として表現されています。

 

現代でこそ、蛍の光は儚く美しいものとして捉えられますが、古代の夜は全くの闇。

わずかな種火を守りながら、夜は真っ暗な闇の中だった時代は、

無数の蛍が舞い踊る姿は、美しさよりも怖れや恐怖を感じさせる光景だったのでしょう。

蛍の光が本物の火とは違い、「熱を持たない冷火」だったことも、

「ネガティブで不吉なエネルギーをイメージさせた」のかもしれません。

 

蛍の発行物質「ルシフェリン」は堕天使「ルシファー」が語源

 

そもそも生物学的な仕組みとして、なぜ「光」を放てるかというと、

ホタルのお尻の近い部分には「発光器」という部位があり、

発光物質と酵素の化学反応を起こすことで光を放つことができます。

 

ホタルの「発光器」の中には

ルシフェリン(Luciferin)
ホタルの尻にある発光する細胞物質
ルシフェラーゼ(Luciferase)
ホタルが体内で作り出す酵素でタンパク質の一種。発光するのを助ける役割をする

というつの発光物質が入っていて、空気中の酸素と反応することで光を出す仕組みになっているのです。

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「ルシフェリン Luciferin」は、生物発光の源になる物質・発光素であり、

ホタル以外にも、同じ原理で発光するホタルイカウミホタルのほか、

光を放つ深海魚や微生物も、同じく「ルシフェリン」を体内に有しています。

 

発行物質ルシフェリンの語源は「ルシファー」

 

じつは、照度単位【ルクス lux】も、ホタルの発行物質【ルシフェリン Luciferin】も、

語源は同じ【ルシファー Lucifer】という「光をもたらす者」「夜明けの明星」という意味のラテン語に由来しています。

明けの明星、すなわち「金星」は、明け方に輝く惑星ですが、

ルシファーといえば、キリスト教の歴史上、

神に反逆した天使「魔王サタン」の別名としても知られています。※1

 

ルシファーはもともと、名の通り天使の中でも特に「神々しく光を放っていた」ため、

自分が天界で最高の存在であると勘違いし、神へ反逆した結果、

地獄へと落とされて「魔王サタン」に変えられてしまったという伝説が存在しています。※2

 

この伝説からも、蛍の発光をどこか不吉なものと感じていたのは、

日本だけでなく、西洋でも同じだったのかもしれません。

 

そんな蛍も、時代が移り変わるにつれて、神秘的な美しさに注目が集まるようになり、

その儚さから「恋」や「霊魂」に例えられたりするようになり、夏の風物詩とかわっていったのです。

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「腐草為蛍(ふそうほたるとなる)」の意味とは?

 

暦の《立春》《春分》《夏至》など、季節の区切りを表す表現で

《腐草為蛍(ふそうほたるとなる)》

という美しい日本語があります。

腐草為蛍(ふそうほたるとなる)

毎年6月11日~6月15日までを示し、二十四節気では「芒種(ぼうしゅ)」の真ん中の時期。

「腐れたる草、蛍となる」という意味で、古代中国の俗説に由来。

腐った様に湿った草から、成虫となった蛍がふわりと飛び立つ様子を示しています。

昔の人は、雨季で腐った草が蒸れて蛍に生まれ変わると信じていました。

実際に蛍は、時期になると蒸れた草の下でひっそりと明かりを灯し始めます。

羽化して朽ちた草の中から光を放つ様子をみて、

昔の人は「腐って蒸れた草が蛍になった」と感じていたようですね。

 

ホタル(firefly)のスピリチュアル的な意味は?まとめ

子供のころ、住んでいた家の近くの川で毎年見ることができた蛍ですが、

現在は“ホタル観賞スポット“と言われる’観光地まで足を運ばないと、なかなかその姿は見ることが出来ません。

太古の時代には、不吉な光として捉えられていたようですが、

どんなに時代が変わっても、誰もがスピリチュアル的な意味があると信じてしまうほど、

数万匹が発光しながら群舞する姿は幻想的です。

最近めっきり愛でる機会が無くなってなくなってしまった蛍、

時期が来たら久しぶりに観に行きたいものです。

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【参考文献】

※1 岩波キリスト教辞典

※2 ラルース世界の神々・神話百科

(2021年8月現在)

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