キョン(羌)は台湾原産の、体長1m体重10kgほどの小型シカ。
鹿(ニホンジカ)とキョン(羌)は、顔つきがよく似てるので
キョン=小さい鹿
というイメージもありますよね。
しかし、キョン(羌)は確かに、シカ科の仲間ではあるものの、
- オスには牙がある
- 繁殖期は1年中!
- 生後たった半年で妊娠・出産可能
- 群れない!単独行動する
- 小さくて素早い!
- 雑食性が強い!
など、鹿の生態とは大きな違いがあるため、繁殖力が強い動物なんです。
キョン(羌)と鹿の違いとは?
シカ(鹿、英語: Deer)とは、シカ科に属する哺乳類の総称で、
約16属36種が世界中の森林に生息しています。
- ニホンジカ(シカ科シカ属)
- トナカイ(シカ科トナカイ属)
- ヘラジカ(シカ科ヘラジカ属)
- キョン(シカ科ホエジカ属)
などが日本では有名です。
ただ、日本国内で単に「シカ」と言うときは、
ニホンジカ(英語: Cervus nippon)を指すことが多いのだとか。
いっぽう、キョン(羌)は、中国東部や台湾が原産の小型のシカ。
鹿の中でも「シカ科ホエジカ属」に分類されるシカの一種。
2005年から伊豆大島や千葉県で野生化して分布が広がったため、
2005年から環境省が定める指定特定外来生物に指定され、駆除&捕獲対象になっています。
鳴き声の違い!
まずは、鳴き声の違いからご紹介!
鹿(ニホンジカ)もキョン(羌)も、シカ科の哺乳類ですが
彼らの鳴き声はずいぶん違います。
キョン(羌)=ワーン!・ア”~!
キョン(羌)の鳴き声は、
「ウォーン、ウォーン」
「ギャオー、ギャオー」
など、よく「犬」に例えられます。
威嚇したり天敵の存在を仲間に知らせるときなど、
犬が吠えるような大きな声で鳴きます。
▼40秒動画★これがキョンの鳴き声!
「ア”~!」
と、ガラの悪いおじさんみたいな野太い声で鳴くキョン(羌)。
夜行性のため、鳴き声もほとんど夜に聞こえることから、
住宅地にこんな鳴き声が夜中に響き渡るのは、ちょっと怖いですよね。。
鹿(ニホンジカ)=フィーー
▼15秒動画★これが鹿の鳴き声!
鹿(ニホンジカ)のオスは発情期になると
「フィー」
「ギィィィー」
と聞こえる、遠くまで響き渡る声を発し求愛を行います。
- 『鹿の遠音』(しかのとおね)… 琴古流尺八の古典本曲として有名な曲
- 『秋の曲』(あきのきょく) 箏曲…幕末に活躍した 吉沢検校作曲
など、古くから鹿の鳴き声を描写した古典の楽曲などもあり、
鹿(ニホンジカ)の声は、どこか切なく哀愁漂う音として親しまれてきました。
体格と色の違い
ずんぐりむっくりのキョン(羌)と、スラっとした鹿(ニホンジカ)。
キョン(羌)は体長70~100cmと小柄で足が短いですが、
鹿(ニホンジカ)は体長90~190cmくらいあります。
キョン(羌)
キョンは体長1m、体重10kgほどの小型のシカ。
体色は茶褐色で、お腹は黄色がかかっています。
目の上から頭にかけて黒い線があるのも特徴的。
大きさは柴犬などの中型犬より少し大きめくらいです。
鹿(ニホンジカ)
鹿(ニホンジカ)はスラっとして足が長く、体高は、人間の腰上くらいの高さまであります。
大型のメスで80kg、オスは200kg近くもあることも。
全身は茶色・尻の毛は白。夏には胴体に白点が出現し、冬になるとほぼなくなります。
角の違い
キョン(羌)のオスのツノは長くて15cm程度、分岐せず、まっすぐに1本生えるだけです。
鹿(ニホンジカ)のオスに生える角は大きいもので70cmにもなり、
枝分かれした角(枝角)を持ち、春先になると落下し新たな角に生え換わります。
牙の違い
キョンって鹿の仲間なのさ。でも牙あるんよね。
体の大きさはシバ犬くらいな感じ🐕 pic.twitter.com/anwWk7arY8— (有)豊和精機製作所 (@HowaSeiki) January 3, 2022
キョン(羌)のオスには、なんと
ニョキっと出た牙(上顎犬歯)
があります!
鹿(ニホンジカ)には、雄雌どちらにも牙はありません。
食べ物の違い
キョン(羌)も鹿(ニホンジカ)も、草食動物。
どちらも、ササ類の葉、木の葉、樹皮などを季節によって食べます。
しかし、近年、野生化したキョン(羌)による雑食性が問題視されていて、
- アリドオシ ←鹿(ニホンジカ)が嫌って食べない植物
- スイカ、トマトなどの農作物
- 肉類を原材料としたドッグフード
などを食べることが報告されています。
繁殖期と初産年齢の違い
キョン(羌) | 鹿(ニホンジカ) | |
繁殖期 | 無し(1年中) | 9月下旬~11月 |
妊娠期間 | 約220日 | 約230日 |
初産年齢 | 生後半年~ | 2~3歳 |
キョン(羌)は、繁殖力が強い動物と言われるだけあって、
なんと、特定の繁殖期がありません。
産まれたメスは、早ければ生後6ヶ月で妊娠・出産可能で、
メスは一年を通じて繁殖するため、
放置すればどんどん数を増やしてしまいます。
いっぽう鹿(ニホンジカ)の繁殖期は、毎年9月下旬~11月、
初産年齢は2~3歳で、1歳で妊娠するのは極めて稀な例なのだとか。
行動の違い
キョン(羌)は群れを作らず、雄雌ペアまたは、単独で行動します。
鹿(ニホンジカ)は、オスメス別々に群れを作って行動します。
この生態からも、キョンが爆発的に増えてしまった理由がありますね。
“指定特定外来生物“キョンの繁殖問題
キョン(羌)は、2005年に外来生物法により『特定外来生物』に指定されています。
現在キョンが野生化して大繁殖している地域は千葉県と伊豆大島。
どちらも、1970年~1980年に、動物園で飼育されていたものが逃げ出してしまったことが原因で、
農地や林野を荒らしたり、交通事故の被害など、人間の生活に大きな影響を与えています。
お話ししたように、キョン(羌)は鹿(ニホンジカ)と同じシカ科の仲間ではありますが、
- 群れずに単独で行動できる
- 繁殖期が1年中
- 妊娠可能な年齢が早い
- 小さく素早いため捕獲が困難
- 雑食性が強い
などの生態系の特徴があり、繁殖力が極めて高い動物。
日本には天敵もいないため、いったん野生化すると増え続けてしまうのですね。
キョン(羌)の肉は、台湾などでは高級食材として人気もあることから、
房総半島では、「キョン」のジビエ化に乗り出す動きもありますが、
なかなか根本的な解決には程遠いようです。
キョン(羌)と鹿の違いと増える理由まとめ
キョン(羌)と鹿(ニホンジカ)の違い。
見た目の体の大きさや角の長さ、キバの有無以外にも、
キョン(羌)が大繁殖してしまう条件はたくさんありました!
ちなみに、キョン(羌)の食用肉は、脂もさっぱりしてとてもおいしいのだそう。
[キョン(羌)の食用肉の味は?日本に来た理由と名前の由来]も是非読んでくださいね!