子供のころ、風邪をひいたとき「消化によいうどんを食べなさい」とよく母に言われたものです。
消化に良い=消化が早い食べ物、ということですが、そもそも
“消化にいい食べ物・消化に悪い食べ物“
とはどういう意味なのでしょう?
そして、なぜ風邪の時は消化に良いものを食べる必要があるのでしょうか。
じつは
消化に悪い食べ物=悪
というわけではなく、消化に良い食べ物も、悪い食べ物も、
どちらも体に大切な働きがあります。
- 消化時間が早いメリットデメリット
- 消化時間が遅いメリットデメリット
- 胃腸の弱さと消化時間の関係
- 便秘と消化時間の関係
など、食べ物の消化時間がどのように体に影響するのか紹介します。
食べた物は消化→吸収→排泄の3ステップ!
食物を消化し、栄養分を体に吸収する働きがある臓器を「消化管」と言います。
消化管は、主に胃・小腸・大腸の3つあり、消化→吸収→排泄の3ステップで食べ物が運ばれていきます。
口から入った食べ物はまず「胃」で蓄えられ、大量の胃酸とともに「消化」の第一段階が行われます。
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体の消化管の働きが弱くなる理由
私たちのカラダの消化管は、生命維持のため24時間365日、フル稼働で動いています。
しかし、
・風邪などで免疫力が低下
・胃腸の調子が弱い
・年齢を重ねる
などの理由で、
消化管の活動機能が低下、消化管の働きが鈍くなってしまいます。
風邪をひいているときは、消化管も休ませる必要があるため、
消化に良いものを食べることは、消化管の負担の軽減にもつながります。
逆に、消化が悪いものを食べるということは、
自分の消化管に対して、必要以上に胃腸に負担を増やしている状態になってしまうのですね。
食べ物の消化→吸収→排泄にかかる時間
人間の体は、たった今食べたものが、どれくらいの時間をかけて排泄される仕組みなのでしょう。
じつは、口から肛門までは、一本の消化管で出来ていて、食べ物は約8メートルも移動します。
平均的な滞在時間は
- 胃の中で約3〜5時間
- 小腸の中で約5〜8時間
- 大腸の中で10〜20時間
ほど通過するのに時間がかかると言われているので、
口から食べ物が胃に入り、消化→吸収→排泄されるまでは、一般的に
約24〜48時間
もの時間がかかるとされています。
食品の消化時間例
消化の良いもの悪いものの、食品と消化時間(=胃にとどまる時間)を例に挙げて比較してみましょう。
・半熟卵(1時間30分)
・白米がゆ100g(1時間45分)
・牛乳100g(2時間)
・米飯100g(2時間15分)
・うどん100g(2時間45分)
・牛肉の煮物(2時間45分)
・豚肉など(3時間15分)
・天ぷら類(4時間)
・ビーフステーキ(4時間15分)
・バター(50g)(12時間)
全体的に、油脂成分が多い食べ物は、特に消化に時間がかかることがわかります。
同じお米でも、炒飯にして表面を油でコーティングしたり、
野菜をバター炒めにすることで、消化に時間がかかるようになってしまいます。
【食べ物の胃の停滞時間目安】
- 果物は約20~40分
- 野菜は約1~2時間
- 炭水化物(ごはんなど)は約4~8時間
- タンパク質(お肉など)は約6〜24時間
もちろん、人間の消化機能は体力や年齢によって個人差はありますが
果物→野菜→炭水化物→タンパク質の順
で消化に時間がかかるというのは誰しも同じ。
脂身の多いお肉を食べると胃がもたれるのは、
通常約3〜5時間の消化活動ですむところ、3倍以上の時間がかかるから。
それだけアブラたっぷりのお肉は、消化するのに体(消化機能)への負担が大きいということですね。
消化によい食べ物とは?
消化に良い食べ物の特徴・条件として
- 消化時間が早いもの
- 胃腸への負担が少ないもの
- 食べたものが早く体で消化・体に栄養が吸収されるもの
が挙げられます。
「消化に良い食べ物」は、血糖値を急激に上昇させるため、
満腹感を得やすいメリットがありますが、その分すぐに空腹も感じやすいデメリットもあります。
消化に良い食事の条件とは?
食べ物の消化を良くするためには、使う食材に気を使うだけでなく、
食べ方や調理法・調味料を工夫することでも、
消化の良い・胃にやさしい食事にすることができます。
- 胃にとどまる時間が短い
- 胃腸を荒らさない(消化に負担が少ない)
- 味付けは薄味で
- 柔らかくて温かい料理
- 小分けにしてよく噛んで食べる
消化の良い食事は、食材を細かく切って柔らかく煮たスープやおかゆが一番です。
食物繊維豊富で消化が悪い野菜でも、生野菜ではなく細かく切って柔らかく火を通すことで、
胃腸に負担が少なく消化の良い食事にすることができます。
そして、濃い味付けにせず薄味にするのがポイントです。
消化に悪い食べ物とは?
いっぽう、消化に悪い食べ物の特徴・条件として
- 消化に時間がかかるもの
- 胃腸への負担が大きいもの
- 食べたものが長く体にとどまり、排泄までの時間も長いもの
が挙げられます。
「消化が悪い食べ物」は、
- 食物繊維が豊富
- 脂肪分が多いもの
- 触感が硬めのもの
- 体を冷やすもの
などの条件が多いため、
胃に負担をかけやすいというデメリットがありますが、腹持ちが良いというメリットもあります。
消化に良い・消化に悪い食品
消化に良い・悪いという視点から単品で食べ物を分けると、次のようになります
消化に良い | 消化に悪い | |
主な意味 | 消化が早く体の負担が少ない | 消化が遅く体に長くとどまる |
血糖値 | 急激に上昇 | 緩やかに上昇 |
食品に含まれる食物繊維 | 少ない | 多い |
体感 | すぐに空腹を感じやすい | 腹持ちが良い |
穀物類 |
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魚介類 |
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肉類 |
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卵類 |
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大豆製品 |
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いも類 |
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野菜その他 |
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果物 |
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その他 |
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繰り返しになりますが、消化が悪い食べ物でも、細かく刻む、柔らかく煮る、よく噛んで食べる…
などに気を付ければ、比較的胃腸にやさしくて消化の良い食事にすることができます。
食物繊維には2種類ある
食物繊維は、ヒトの消化酵素では消化されず、便として全て排出されるものなので、
「消化に良い・悪い」
という観点とはまた異なりますが、排泄をスムーズに促すという意味ではとても大切なモノです。
食物繊維は、五大栄養素(たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル)に次いで
「第六の栄養素」としても注目されています。
食物繊維は、植物(イモなどの野菜・豆類・果物・海藻)に多く含まれていて、
・不溶性食物繊維
・水溶性食物繊維
の2種類があり、排泄を促す大事な役割がありますが、肉類にはほとんど含まれていません。
水の温度と消化の関係
普段何気なく水分補給をしている「水」の温度。
実は水分も、温度によって体への負担=消化スピードが変わってきます。
水の温度 | 比較目安 | 体への水分吸収速度 | 胃腸への負担 |
冷水(5℃~15℃) | 冷蔵庫で冷やした温度 | ○速い | ×大きい |
常温水(20℃~35℃) | 外気温とほぼ同じで蛇口から出てくる水温度 | △ゆっくり | △ほぼ無し |
温水(60℃~80℃) | 自販機の温かい飲み物と同じ | ×遅い | ○無し |
冷たい水は、体への吸収が速いので、胃腸を刺激して代謝アップに最適ですが、胃腸の弱い方は飲み方に注意が必要です。
温かい水は、体をリラックスさせる効果が強く胃腸への負担も少ないため、普段の水分補給に最適です。
便秘と消化の関係
ダイエットなどで食事量が少ないと胃腸の働きがにぶり、便秘になりがちです。
便意があるのに排泄を我慢してしまうと、脳が便意を我慢するものと認識し、便意自体が起こらなくなってしまいます。
ですから、便秘を防ぐには
「胃が働きやすい食物を摂る」
「トイレを我慢しないこと」
が重要になります。
便秘解消には食物繊維をたっぷり摂る
便秘の状態によって個人差はありますが、基本的には
水溶性・不溶性の2つの食物繊維をバランスよく・たっぷり摂る必要があります。
「胃が働きやすい食物」=体に負担をかけずに、胃内の滞留時間が短く消化の良いもの
を朝食に摂ることで、自然な便意が起こります。
朝食におかゆやフルーツ、生野菜サラダが良いとされるのは、そのためです。
便秘気味の人は、お肉や炭水化物ばかり食べていないか食生活を見直してみましょう。
胃腸が弱っている時と消化の関係
風邪をひいたときや病み上がりなどは、免疫力が低下しているため、胃腸の働きも弱った状態です。
「消化の悪いもの」=消化に負担のかかる油の多い料理・味付けが辛い、甘い、濃いなどの食事は避けたほうが良いでしょう。
やわらかく煮たうどん、おかゆなどの炭水化物は、消化が良く、すぐに体のエネルギーになるので最適です。
柔らかいもの&温かい料理
胃腸への負担を減らし、働きを高めるには、温かくて柔らかい料理が最適です。
野菜は生野菜ではなく、温かいスープや温野菜にして食べたほうが体に優しいですね。
消化に負担のかかる食材を使わない
お肉も、脂肪分が多いと消化に負担がかかるため、たとえば、うどんの具材などは
ささみ・半熟卵
にするなど、早く消化できるものがおすすめです。
小分けによく噛んで食べる
お腹にどれだけの食べ物を入れるかもポイントです。
一度にたくさんの食べ物が胃に入ろうと負担が大きくなってしまうので、
消化をよくするためにも少しずつよく噛んでゆっくり食べることが大事です。
消化の良い・悪い食べ物一覧!胃腸にいいもの・消化時間まとめ
一言で「消化に良い」「消化に悪い」といっても、それぞれメリットデメリットがあります。
人間の内臓は思っている以上に働きモノで、24時間365日、食べ物を消化吸収する労力に、
摂取エネルギーの70%も費やされています。
見えないからと、自分の内臓をいたわることをおろそかにせず、たまにはゆっくり休めてあげることも大切です。
体に優しい食生活を見なおして、みなさんも胃腸に負担のかけない食生活を意識してみませんか。