ぼたもち・おはぎ・あんころもちの違いは季節だけ?夜船・北窓の由来も!

おはぎ ぼたもち

 

お彼岸で悩まれる方が多いのが「ぼたもち」と「おはぎ」の違い。

こしあんがおはぎで、粒あんがぼたもち? いやいや、米粒が残っているのがおはぎで、完全なお餅がぼたもち?

では「あんころもち」との違いは何?

おはぎとぼたもち以外にも、「夜船」「北窓」と、春夏秋冬季節で呼び分けるってホント?

今回は「ぼたもち」と「おはぎ」の違いや見分け方の諸説のまとめ、

結局、何がどう違うのかを分かりやすく解説します!

春のお彼岸は「ぼたもち」、秋のお彼岸は「おはぎ」

 

結論から言うと、「ぼたもち」と「おはぎ」は同じ食べ物です。

  • 春のお彼岸(3月くらい) → ぼたもち(牡丹餅)
  • 秋のお彼岸(9月くらい) → おはぎ(御萩・萩の餅)

「おはぎ:はぎのもちの別称」
「はぎのもち:煮た小豆を粒のまま散らしかけたのが萩の花に似ているのでいう。また、ぼたんに似るから牡丹餅(ぼたもち)ともいう」
「ぼたもち:はぎのもちに同じ」

『広辞苑 第五版』より※1

 

ぼたもちとおはぎの名称の由来は、それぞれの季節に咲く花からきています。

春の彼岸に食べる「ぼたもち」は、春に花が咲く「牡丹(ぼたん)」が由来、

秋の彼岸に食べる「おはぎ」は、秋に花が咲く「萩(はぎ)」が由来です。

 

昔の人々は、小豆の収穫時期に関係し、春にはこしあん、秋にはつぶあんが食べられていましたが、

現代では、全く区別しないのが一般的

 

他にも「ぼたもち」と「おはぎ」には

「夜舟」

「北窓」

「隣しらず」

などの別名もあります。

 

季節によって、地方によって、お店によっても呼び方は異なる場合があり、

諸説はさまざまあるので、紹介しましょう

 

季節(春の牡丹餅/夏の夜船/秋の御萩/冬の北窓)の由来

 

今では季節の区別なく呼ばれることが多い「ぼたもち」と「おはぎ」ですが、

春夏秋冬で「ぼたもち」「夜船」「おはぎ」「北窓」と分けて呼ぶこともできます。

 

「夜船」「北窓」は、いずれも米をつくことをしない工程から「搗(つ)き知らず」とコトバをかけて呼ばれています。

  • 「夜舟」…着き(つ)知らず(夜は船がいつたのか分からない意)
  • 「北窓」…月(つき)知らず(北の窓は月が見えない意)

春夏秋冬、それぞれの「ぼたもち」の呼び方と由来を見てみましょう。

※2※3

 

春の「牡丹餅(ぼたもち)」

牡丹

牡丹(篠山市の観音寺にて)by wikimedia

牡丹の花が咲く季節(4~6月ごろ)の春の彼岸に、

神仏や先祖への供物とされた小豆餡の様子を、牡丹の花に見立てたことから。

夏の「夜船(よふね)」

 

ぼたもちは、お餅と違い、餅つきをしません。

杵で搗(つ)かないので「ペッタン、ペッタン」という音を出さずに作ることができます。

 

隣に住む人には、いつ搗(つ)いたのか分からない。そこで、

「搗き知らず」→「着き知らず」

言葉遊びをして、夜は船がいつ着いたのか分からないことから「夜船」となったようです。

 

夏の夜船。月を水面に浮かべて静かに波間を行き交う屋形船を思い起こせばいいのでしょうか。

夏=夜船がシックリくるところが不思議ですね。

 

秋の「御萩(おはぎ)」

萩

ヤマハギ (Lespedeza bicolor)by wikimedia

 

萩(ハギ)は、秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。

牡丹餅と同じく、萩の花が咲く秋のお彼岸に、小豆餡の様子を萩の花に見立てたことから。

 

冬の「北窓(きたまど)」

 

夜船と同様、

「搗(つ)き知らず」→「月知らず」

言葉遊びをして、月を知らない、つ月の見えないのは、北の窓なことから「北窓」となったとのこと。

寒い冬に北の窓。雪がシンシンと積もる外を北窓から眺めている状況でも想像してみましょうか。

冬=北窓もイメージが結びつきますね。

 

季節によって呼び方が変わるものといえば他にも、お中元とお歳暮があります。

“お世話になった方へ贈り物をする”という行為は同じなのに、夏と冬では呼び方を変える。

日本人らしいセンスですよね。

 

「ぼたもち」と「おはぎ」の違い!諸説4つ

 

ぼたもち(牡丹餅)とは、一般的に、もち米とうるち米を混ぜたもの(または単にもち米)を、

蒸すあるいは炊き、米粒が残る程度に軽くつ(搗)いて丸めたものに、あん(餡)をまぶした食べ物です。

 

しかし、米の種類やあん(餡)によって、また地方によって、お店によっても呼び方は異なる場合があり、

じつは2つの違いには他にもたくさんの諸説あります。

 

諸説1)餡の違い?粒あん VS こしあん

諸説2)大きさや形の違い?

諸説3)米の違い?もち米 VS うるち米

諸説4)餅のつき方の手加減の違い?

 

ひとつづつ紹介します

 

諸説1)餡の違い?粒あん VS こしあん

 

  • 春のこしあんが「ぼたもち」
  • 秋のつぶあんが「おはぎ」

 

「あんこ」の違いで呼び名が変わり、こし餡を用いているのが「ぼたもち」、つぶ餡や煮た小豆そのまま使っているのが「おはぎ」という説。※4※8

実際に、昔は小豆の収穫時期に関係し、春にはこしあん、秋にはつぶあんが食べられていました。

 

春のお彼岸のぼたもち

冬を越した小豆を使うため、皮は固いので食感が悪くならないよう、皮を取り除いた「こしあん」を使う

秋のお彼岸のおはぎ

豆の収穫期と同じでとれたての柔らかい小豆をつかうので皮も一緒につぶした「粒あん」を使う

 

今の時代は、保存技術の発達や品種改良により、一年中こしあんも粒あんも頂けるため、

この理由は通じなくなっていますが、

ぼたもちとおはぎの歴史を思い、春のお彼岸にはこしあんのぼたもちを、秋のお彼岸には粒あんのおはぎをいただきながら、

季節の風情を感じたいものですね。

 

諸説2) 大きさや形の違い?

 

  • 大きくて丸い形を「ぼたもち」
  • 小さく細長い俵型を「おはぎ」

 

牡丹(ぼたん)は、花が大きく丸くて豪華なので、どかっと大きいのが「ぼたもち」。

一方、萩(はぎ)の花は、小さく上品な感じなので、細長い俵型のような形状が「おはぎ」という説。※4

 

また、二口程度で食べられる小さいものを「おはぎ」、それより大きいものを「ぼたもち」という説も。※8

 

諸説3) 米の違い?もち米 VS うるち米

 

  • もち米 →「ぼたもち」
  • うるち米 →「おはぎ」

「おはぎ【御萩】秋の彼岸の代表的菓子。その季節の花が萩であることから。現在では、春の彼岸に作られるぼた餅と同じものだが、もともとは餅の外側をあんでおおったものを『ぼた餅』、蒸したもち米をそのまま丸めてあんをまぶしたものを『おはぎ』と呼んだといわれる。」

『日本料理行事・仕来り大事典 用語編』※3

 

普通のお米のことを「うるち米」、お餅やお赤飯、おこわなどに使われるお米を「もち米」と言います。

もちの部分を構成しているお米の種類が、「ぼたもち」はもち米、「おはぎ」はうるち米がそれぞれ使われているという説。

 

ただ、レシピによっては、材料が「十六穀米」など、もち米でもうるち米でもない場合もあり、

この場合はハッキリ分けることは難しそう。

 

諸説4)餅のつき方の手加減の違い?

 

  • (もちのつき方が)容赦ないものを「ぼたもち」
  • (もちのつき方が)容赦あるものを「おはぎ」

 

もち米をお餅になるまでついたものを「ぼたもち」、

まだ粒が残る程度についたものを「おはぎ」と呼ぶという説も。※9

 

ぼたもち・おはぎは地域性もあり!関西では?

 

「ぼたもち」「おはぎ」の呼び方は地域の特産品によっても特徴があり、

店頭でもネットでも、通年を通して販売しています。

 

愛知以東で「おはぎ」といえば、はあんこ、きなこ、ごまが定番商品で、

関西ではとくに青のりを加えているのが特徴的。

 

関西の青のりは約35年前、大丸心斎橋店に出店する時、百貨店の要望を受けて売り出し、需要のある地域に広げたのが始まりだそうで、

関西でおはぎ(ぼたもち)といえば「青のり」が定番なんだそう。※5

 

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ぼたもち・おはぎ・あんころもちの違い

 

ぼたもち、おはぎとよく似た食べ物で、「あんころもち」もと同一視されることもありますが、

  • あんころ餅 → 完全にお餅
  • ぼたもち、おはぎ → 中身がお餅とは限らない(米粒が残っている)

という点で、区別されていることも多いようです。※6

 

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「あんころ餅」とは、もともと「小豆餡でくるんだ餅」を意味する言葉、

餡が衣状になっていることから「餡衣餅」の名が付き、そこから「あんころ餅」に変化したと言われています。

 

「ぼたもち」や「おはぎ」などの場合、中の餅に米粒が残っているのに対し、

「あんころ餅」は完全にすり潰した餅となっているのが特徴です。

このことから、

「あんころ餅」を別名『全殺し』

「ぼたもち」や「おはぎ」を別名『半殺し』

などと呼ぶこともあります。

 

おはぎ用語『半殺し』『皆殺し(本殺し・全殺し)』とは?

 

ぼたもち(おはぎ)の用語の、

  • 「半殺し」
  • 「皆殺し(本殺し・全殺し)」

という、何やら物騒な言葉。

 

「今日は半殺しにしようか……」

と、日常的に言う人たちが、徳島県と群馬県の一部の地域にいらっしゃるのですが、

これは、米粒のつぶつぶがしっかり残っている状態を「半殺し」と表現しています。

 

「はんごろし」は、徳島県那賀町名物の、もち米にうるち米を混ぜたごはんで餡を包み、周りにきな粉がまぶされた郷土菓子(おはぎ)。

現在も、郷土和菓子「半殺し」「半殺し餅」を徳島県や群馬県などで売っているところもあります。

 

「全殺し」もある…!

 

もともと「半殺し」とは、東北地方や長野県、静岡県、四国地方などの方言だった説もあり、

小豆をこしあんにすることを『皆殺し』、粒あん(粒が残っている状態)にすることを『半殺し』と表現するのだとか。

 

興味深いのは、地方によってはお米のつぶれ具合ではなく、あんこの状態で呼び分けることもあり、

  • 粒あん状態を「半殺し」
  • こしあん状態を「皆殺し(本殺し・全殺し)」

と、

  • 中身がつぶつぶの状態を「半殺し」
  • 中身が完全にお餅の状態を「皆殺し(本殺し・全殺し)」

いずれもお米や豆をすりつぶした状態をさした言葉として、呼び分ける地域もあります。※4※7

 

つまり、なめらかなお餅にあんこをまぶしたのが「あんころ餅」は

いわば小豆も米も『全殺し』でつくられた和菓子。

怖い怖い!(笑)

地域によって定義が変わるのも、おもしろいですね。

お彼岸におはぎやぼたもちを食べる由来や歴史

 

そもそも、なぜお彼岸にぼたもち(おはぎ)をいただくようになったのでしょうか?

大きな理由としては、

 

  • ご先祖様へのお供えものに由来
  • 小豆で無病息災を祈るという意味
  • 収穫の神様に感謝を込めて

の3つがあります。

 

江戸時代にお彼岸や四十九日の忌明けに食べる風習が定着したそうですが、

魔よけの効果があると考えられた小豆で身体を調え、神仏に手を合わせることで無病息災を祈りながら、

古くから邪気を払う食べ物としての信仰が、先祖の供養と結びついたといわれています。

 

また仏教で彼岸とは、彼の岸として悟りの境地をいい、

ご先祖さまとの距離も近くなると考えられているお彼岸の時期にだけ、

当時高価だった小豆やお米を特別に供え、食べる習慣がうまれたと考えられます。

 

また、「暑さも寒さも彼岸まで」といわれるように、春の彼岸は農作業が始まる時期、秋の彼岸は収穫の時期にあたります。

よって、春には収穫をもたらす山の神を迎えるため「ぼたもち」を、

秋には収穫を感謝して「おはぎ」を作ったともいわれています。

 

ぼたもち・おはぎ・あんころもちの違いは季節だけ?夜船・北窓の由来まとめ

 

昔の人は、同じ食べ物でも4つの名前をつけるほど、自然や季節との結びついて、遊び心もありながら風情もあったんだと感心させられます。

  • 春の「ぼたもち」
  • 夏の「夜船」
  • 秋の「おはぎ」
  • 冬の「北窓」

季節の花や美しい風情が由来した日本語が、身近なおはぎに隠されていたんですね。

 

【参考文献】

※1 新村出 編. 広辞苑 第5版. 岩波書店, 1998.

※2『あんこの本』 姜尚美/著

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