秋は絶好の行楽シーズン。野山を散策してキノコ狩りを楽しむ機会も多くなりますね。
しかし毎年のように起こってしまう、毒キノコ誤食による食中毒。
日本にあるキノコは5000種以上とも言われ、そのうち食用はたった100種ほど、
その他の多くは、猛毒のキノコか、食べられるかどうかさえ分かっていないキノコなのです!
キノコは公園や神社の境内など身近な場所にも多いので、
安易に自分で取ってきた野生のキノコや、人からもらったキノコを食べることは非常に危険です。
中には触るだけでも肌に炎症を起こしてしまう種類も!
- 毒キノコの被害件数
- 毒キノコの種類
など見てみましょう。
食用と間違いやすい毒キノコベスト3
食用と間違いやすい毒キノコは多数ありますが、代表的なものを紹介します。
- ツキヨタケ(月夜茸)
- クサウラベニタケ(草裏紅茸)
- ニガクリタケ(苦栗茸)
これらの毒キノコは、シイタケ・シメジ・ナメコなど、
ふだん食用としているものに良く似ていて、SNSでも困惑の声が多数。
山菜・野草やキノコを摘んで、旬のおいしさを味わうのは、自然の楽しみ方の醍醐味ですが、
とにかく、自生しているキノコは、自己判断で絶対に食べてはいけません!
ツキヨタケ(月夜茸)
引用:厚生労働省の詳細ページはこちら
ツキヨタケは、食用としておなじみのヒラタケ、ムキタケ、シイタケによく似ているため、間違いやすさワースト1の要注意キノコ。
ツキヨタケは、キシメジ科ツキヨタケ属のキノコで、
夏から秋にかけて、ブナ、カエデなどに重なり合って発生し、
毎年患者数が最も多い毒キノコです。
「月夜」という名前の通り夜は怪しく光ります。
見た目は綺麗で触ってみたくなりますがとても危ないキノコです!
>症状
食後30分~1時間程度で嘔吐・下痢・腹痛などの中毒を起こします。
>間違えやすい食用キノコ
マンフロットの三脚をご愛用いただいている、フォトグラファーの 虫上 智さんより、「しわがらの滝」「北広島の山奥で光るキノコ、ツキヨダケ」のお写真をシェアいただきました!幻想的です💛 pic.twitter.com/nOalmwfAQA
— Manfrotto Japan【マンフロット公式】 (@manfrotto_jp) September 28, 2015
しいたけは軸がある
だが
ツキヨダケと言うキノコは軸短かく軸を半分にさくと黒いシミがあり
ツキヨだけには毒がある
間違えて取って食べると食中毒を起こす pic.twitter.com/y3b40huZEG— ソープ(GRCReW) (@PuWesker) April 23, 2018
天然のシイタケっぽいけど
ツキヨダケ(猛毒) pic.twitter.com/kZVkGyaxIs— ゴリ (@GEN5656) October 23, 2016
夏から秋にかけて広葉樹の地上に発生。
>症状
食後20分~1時間程度で嘔吐・下痢・腹痛など消化器系の中毒を起こします。
唾液の分泌、瞳孔の収縮、発汗などの中毒症状も現れます。
>間違えやすい食用キノコ
ウラベニホテイシメジ、クサウラベニタケ、カクミノシメジ、ハタケシメジ、シメジモドキ、ホンシメジ
特にクサウラベニタケ(草裏紅茸)は
温度や湿度、年齢や時間によって形を変えてくるさながらきのこ界の怪人百面相
更に致死毒も持ち、死亡例も出ています
図鑑やプロでもこいつには泣かされるとか「紅」が入ってるからって食べたりお裾分けしたらダメだぞ…
マジできのこの授受はやめましょう pic.twitter.com/AfrA007wHa
— 🍄マウンテンIB🍊🕐🕓🕑🍄 (@IBMountain_P) February 17, 2020
#きのこ茸キノコ #10月16日
学校の裏山にイッポンシメジか
ウラベニホテイシメジか
クサウラベニタケか
何か生えてる pic.twitter.com/LZYkk1Qho2— 拳で抵抗するケンン (@Seabass2Aw) October 16, 2018
死亡例もあり、一年を通して発生。広葉樹・針葉樹の枯れ木などに群生します。
>症状
食後3時間程度で強い腹痛・激しい嘔吐・下痢・悪寒などの中毒を起こします。
重症の場合は、脱水症状、けいれんなどの症状が現れて死亡する例も。
>間違えやすいキノコ
ナメコ,クリタケ,ナラタケ,ナラタケモドキ
ニガクリタケ (Hypholoma fasciculare)
有毒 (poisonous)
場所:浪岡 (Namioka)
撮影日:2020.11.03 pic.twitter.com/O6tiCNna75— Polyhedral Flame (@FlamePolyhedral) November 4, 2020
今日は朝から忙しく、ようやくこの時間落ち着きました。20時10分現在気温9℃ 雲は多いものの所々星が見える夜空です。今朝、足早に撮った写真は毒菌のニガクリタケ、かじると苦いので見分けやすいキノコではありますが、この季節に出るクリタケと似てる個体があるので注意が必要です。 pic.twitter.com/Aw8aO2qeCN
— お山の森の木の学校 (@yamamoriki) October 29, 2020
毒キノコや山菜の食中毒件数
獲ってきたキノコをうっかり誤って食べ、食中毒を起こす事例は毎年起きています。
報告されているだけでも、過去10年間で約2,400人が食中毒を起こし、うち13人が亡くなっています。
野山に自生する山菜・野草やキノコ毒の食中毒発生状況(平成18~27年)
事件数 | 患者数 | 死亡数 | |
---|---|---|---|
毒キノコ | 494件 | 1,476人 | 5人 |
有毒植物 | 207件 | 977人 | 8人 |
合計 | 701件 | 2,453人 | 13人 |
政府広報オンラインgov-online.go.jpより抜粋
“有毒植物”とはジャガイモの芽・水仙なども含みます。
毒キノコかどうか分からない時
食用のキノコかどうか分からないキノコを貰ったりした場合は、
万一の為にも速やかに最寄りの保健所へ相談してください。
図鑑などの写真や絵にあてはめ、「見分け方」を自己判断で鑑定することは避けましょう。
キノコには地方名・俗名も多数!
とくに食用との誤食が多いとされる
・ツキヨタケ (福井県ではブナタロウなど)
・クサウラベニタケ (岩手県ではイッポンシメジなど)
・ニガクリタケ (青森県ではスズメタケなど)
などは地方名・俗名が多数あり、地方によって呼び方が違います。
また、例えば岩手県でクサウラベニタケを意味する
「イッポンシメジ」
という名前。
福島などでは“ウラベニホテイシメジ”という⾷⽤のキノコを呼ぶこともあり、
同じ名前でも、場所が変われば違うキノコを意味する場合も。
同じ名前でも、地方によっては違うキノコを意味したり、
研究結果が進んだことで、昔は食用キノコだったものが毒キノコに認定されたり…
毒キノコについての複雑な事例はたくさんあります。
このことからも、写真や名前を頼りに自分で判断したり、人から貰ったキノコを安易に口にすることは避けた方がいいですね。
毒キノコ中毒件数ランキング
過去10年間で報告されているだけでも、毒キノコによる患者数は1,441人になり3件の死亡が確認されています。
(※当記事で写真入りで紹介しているきのこ)
→スマホの方は横スクロールで表が見られます→
きのこの種類 | 間違えやすい食用キノコの例 | 平成19~28年 | ||
事件数 | 患者数 | 死者数 | ||
ツキヨタケ※ | ヒラタケ、ムキタケ、シイタケ | 203 | 720 | 0 |
クサウラベニタケ※ | ウラベニホテイシメジ,ホンシメジ,ハタケシメジ | 87 | 265 | 0 |
テングダケ | ― | 20 | 35 | 0 |
ドクササコ | ナラタケ,ホテイシメジ,アカハツ,チチタケ | 16 | 26 | 0 |
イボテングタケ | ― | 12 | 17 | 0 |
カキシメジ | ニセアブラシメジ,チャナメツムタケ,シイタケ | 9 | 21 | 0 |
イッポンシメジ | ― | 11 | 37 | 0 |
オオシロカラカサタケ | ― | 11 | 19 | 0 |
ニガクリタケ※ | ナメコ,クリタケ,ナラタケ,ナラタケモドキ | 3 | 3 | 0 |
オオワライタケ | ― | 4 | 7 | 0 |
ニセショウロ | ― | 3 | 6 | 0 |
ハイイロシメジ | ― | 3 | 6 | 0 |
ヒカゲシビレタケ | シロマツタケモドキ,ハラタケ,ツクリタケ | 2 | 3 | 0 |
タマゴダケモドキ | キタマゴタケ | 2 | 2 | 0 |
ドクツルタケ※ | シロマツタケモドキ,ハラタケ,ツクリタケ | 2 | 2 | 0 |
ニセクロハツ※ | クロハツ,クロハツモドキ | 1 | 6 | 1 |
オオシビレタケ | ― | 2 | 4 | 0 |
カブラアセタケ | ― | 1 | 1 | 0 |
その他 | ― | 34 | 80 | 1 |
不明 | ― | 65 | 181 | 1 |
合計 | 491 | 1441 | 3 |
引用:厚生労働省 -毒キノコに注意-
この他に毒キノコとして有名なものは下記があります。
- オオキヌハダトマヤタケ
- ホテイシメジ
- ハナホウキタケ
- ヒトヨタケ
- コレラタケ
- ウスキキヌガサタケ
- ウシグソコナヒトヨタケ
- ヒョウモンクロシメジ
死亡例もある代表的な猛毒キノコ6つ
日本に自生している毒キノコは、すくなくとも200種類以上~数千種類とも言われていて、
まだまだ発見されていない毒キノコも多数あります。
なかでも、死亡例も多く報告されている猛毒キノコを6つ紹介しましょう!
- ニセクロハツ(偽黒初)
- ドクツルタケ(毒鶴茸)
- フクロツルタケ(袋鶴茸)
- シャグマアミガサタケ(赤熊網笠茸)
- カエンタケ(火炎茸)
- スギヒラタケ(杉平茸)
ニセクロハツ(偽黒初)
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ニセクロハツは、ベニタケ科ベニタケ属。
夏から秋にかけてシイ・カシ林に発生します。
食用シイタケにに見た目そっくりで、おいしそうなので誤食事例が多数。
かさの径は5~12cm。生長するとじょうご形になります。
同じく毒キノコのクロハツ(黒初)と見た目がそっくりなので、
ニセクロハツ(偽黒初)という胡散臭い名前のキノコ。
ニセクロハツの注意喚起のための厚生労働省のページはこちら
ドクツルタケ(毒鶴茸)
引用:厚生労働省の詳細ページはこちら
白く囲んだところ…根元には袋状のツボがある
黄色の部分…ツバの下は繊維状のささくれ
赤矢印…柄の上部にはツバがある
ドクツルタケは、テングタケ科テングタケ属。
死亡例がもっとも多いといわれる「殺しの天使」と異名を持つ猛毒キノコ。
夏から秋に広葉樹林や針葉樹林に発生します。
かさの径は5~15cm。つやのある白色で、ほぼ平らに開きます。
フクロツルタケ(袋鶴茸)
引用:きのこ図鑑
フクロツルタケは、テングタケ科テングタケ属。
夏~秋に林内の地上に発生します。
かさの径は5~8cm、表面は白色~褐色をしています。
柄は綿くず状の鱗片におおわれ、ツバはありません。
根元に大きな袋状のツボがあります。
シャグマアミガサタケ(赤熊網笠茸)
シャグマアミガサタケは、フクロシトネタケ科シャグマアミガサタケ属。
春にマツなどの針葉樹林の地上に発生する、脳みそみたいな不気味すぎる毒キノコ。
高さ3~10cm。頭部は赤褐色で柄は白色から淡黄褐色で縦に深いしわがあります。
煮沸すると気化し、調理中にこれらを吸い込んだだけでも中毒を起こすという恐ろしいキノコです。
カエンタケ(火炎茸)は触るだけで危険!
引用:厚生労働省の詳細ページはこちら
カエンタケは、ニクザキン科ツノタケ属。
地上からピースした指が突き出している…!?見た目からして怪しい物体。
夏から秋にかけてブナ,ナラに発生します。
高さ3~8cmほど、火のような朱色をしています。
毒性が強く,触るだけでも皮膚の炎症を起こし、食べて死亡例もあります。
カエンタケは、食用のベニナギナタタケと非常によく似ているので要注意!
▼食用のベニナギナタタケは細長く柔らかい。
スギヒラタケ(杉平茸)は食用から毒キノコに変更!
引用:厚生労働省の詳細ページはこちら
スギヒラタケは、キシメジ科スギヒラタケ属。
古くから食用とされてきましたが、食後、急性脳症のような症状事例が発生し、
現在は毒キノコに指定されています。
晩夏から秋にかけてスギ、マツなどの針葉樹の倒木や古株に群生します。
具体的な食中毒症状
毒キノコの中毒症状は、食べたキノコの種類や有毒成分や量などによって異なりますが、
食べてから20分~2時間以内
長いものだと
食べてから6時間~10時間以内
ほどして次のような症状が表れます。
- おう吐
- 下痢
- 腹痛
などの消化器系の障害が一番多く
- 発汗
- 手足のしびれ
- 意識もうろう
- 目の瞳孔の収縮
など神経系の障害などが挙げられます。
重症の場合は、
- 脱水症状
- 呼吸困難
- 痙攣(けいれん)
特に、意識がもうろうとしていたり痙攣があるなど緊急を要する重度の症状の場合は、
気道に食べたものが詰まって呼吸が出来なくなる危険性があるため、
無理に吐かせようとせずすぐに救急車を要請する必要があります。
少しでも疑わしい場合はすぐに病院へ
「カサ」「ツバ」「ツボ」…意外と多いキノコの各部名称。
どんなキノコのどこの部分を食べたのか?など、
緊急時など状況を伝えるときにも役立ちます。
口に入れて強い苦味や舌のしびれなどを感じたら、すぐに吐き出してください。
少しでも異変があればすぐに近くの医療機関(内科など)で受診を。
その際は食べてしまったキノコを持参します。
食品衛生法第58条では、毒キノコなどの有毒植物を食べた患者を診察した場合、
医療機関から保健所に届ける必要があり、厚生労働省では毎年その統計をとっています。
緊急時に相談できる場所
㈶日本中毒情報センターでは“中毒110番”として、一般向けの電話サービスを行っています。
化学物質や動植物の毒によっておこる「急性中毒」について、
実際に事故が発生した場合に限り情報提供をしています。
家庭用品:乾燥剤、化粧品、たばこ
医薬品:医療用医薬品、一般用医薬品(OTC薬)
農業用品:殺虫剤、殺菌剤、除草剤、肥料
自然毒:フグ、マムシ咬傷、きのこ
工業用品:硫化水素、化学薬品
【大阪中毒110番】(365日24時間対応)
電話:072-727-2499(情報料:無料)
【つくば中毒110番】(365日9時~21時間対応)
電話:029-852-9999(情報料:無料)
※詳細は日本中毒情報センターへ
毒キノコの迷信は信じてはいけない
毒キノコに関しては、むかしから迷信や言い伝えが根強く残っています。
・毒キノコは派手な色をしているので、地味な色は食べてOK!
・塩漬けで毒は消える
・ナスと一緒に煮ると毒は消せる
・においの悪いきのこは毒、香りのよいものは食べて良い
・柄が「縦に裂ける」きのこは食べてよい
・虫食い跡があるきのこは人間も食べてよい
・銀スプーンと煮て黒く変色するものは食べられない
・乾燥させれれば食べてよい
・油で炒めれれば問題なし
など色々ありますが、全て科学的な立証や根拠は無いため、信じてはいけません。
まとめ
日本で知られている毒キノコを色々と紹介しました。
誤って食べてしまう一番の理由は
食用と色も形も非常によく似ている
ということ。
中には、触っただけでも皮膚の炎症を起こし、近寄って毒素を吸い込むだけでも症状が出るものもありますので、安易に近づくことは避けましょう。
貰ってしまったもので判断に迷ったら、最寄りの保健所へ相談できます。
キノコを食べて少しでもしびれや体調が悪くなったらすぐに病院で検査を。
・近づかない
・採らない
・食べない
・人にあげない
この4つの行動を徹底して安全にキノコを食べましょう。